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佐川美術館アートコラム(87)

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滋賀県守山市

■「手」でつくるぬくもり
佐川美術館
学芸員:栗田頌子(くりたしょうこ)

私は最近、刺し子という新たな趣味を見つけ、夢中になっています。刺し子とは布に糸を縫い付ける伝統手芸のことで、元々は保温性や強度といった布の機能性の向上を目的としていましたが、図柄を縫うという装飾性がプラスされ、見た目の美しさにも拘(こだわ)るようになり今に至ります。糸を縫い付けてだんだんと模様が出来上がると達成感や愛着が湧いてきます。そんな刺し子の最大の魅力は、手作りならではの温かみです。機械では表現しえない味わい深さがあります。
当館のコレクションにも、そのようなぬくもりを魅力とする作品があります。例えば陶芸の形成手法の一種である手づくねは、轆轤(ろくろ)を用いず手の力だけで粘土をこねて器の形を作り出します。当館所蔵作家・樂(らく) 直入(じきにゅう)の茶碗(ちゃわん)も手づくねで作られています。手づくねによって生み出された作品は、手や指の跡がそのまま茶碗の表情になるだけでなく、持ってみると土の柔らかさや温かみを感じられ、手のひらにぴったりなじんできます。手づくねと一口に言っても、茶碗の原型を形成した後は数日間乾燥させて、飲み口や内側、台座である高台などを箆(へら)で一削り一削り形作るため、茶碗の姿が完成するまで長い時間がかかっています。
手づくねの茶碗は轆轤という道具の制約がない分、より直接的で自由な表現ができ、一つとして同じ大きさや形にならず個性にあふれ、魅力的な造形美を生み出します。この秋は、美術館で作家の手のぬくもり感じる作品たちを鑑賞してみませんか。

※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。

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〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

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