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佐川美術館アートコラム(78)

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滋賀県守山市

■発見ニススメ

佐川美術館
学芸員:上村 友理(うえむらゆり)

立春が過ぎ、暦の上では春を迎えています。そろそろ見頃を迎える梅は、寒の名残のある頃から咲き始めるので、百花の魁(さきがけ)といわれます。朝、窓を開けると漂ってくる香りは、一足早い春の到来を教えてくれます。
古来より愛でられ、目出度(めでた)いものに挙げられる梅は、画題としてよく描かれてきました。有名な梅の絵としてまず思い浮かぶのは、尾形光琳(おがたこうりん)(1658~1716)作《紅白梅図屏風(びょうぶ)》(MOA美術館蔵)ではないでしょうか。左右に梅、中央に黒い川が豪快に流れる構図は、今なお斬新に映ります。21世紀に入ると、描き方など技法・材料の謎に迫る調査が行われました。この時、川には銀が使用されたという考えに反して金属元素が検出されず、一時、大きな謎として注目を集めました。しかし、その後の調査では、測定器の精度の向上もあり、銀を含む金属元素が確認されます。その結果、黒い部分は銀箔(ぎんぱく)を硫黄で黒変させ、波は礬水(どうさ)*で黒変を防ぎ描いたのではないかと考えられています。
描かれてから300年以上経ても人々を惹(ひ)きつけ、新発見が出てくる、見つけようとする人がいるのは、絵が持つ魅力の高さ故でしょう。改めて鑑賞すると、全体が画面に収まりきらない紅白の梅は、まだ一分咲き程度と、これから咲き誇っていく未来を予感させます。幾度も目にした作品も、鑑賞するたびに何か新しい気付きが出てきます。春に向かい日増しに暖かくなる日に、新しい何かを見つけに出かけるのはいかがでしょう。
*膠(にかわ)と明礬(みょうばん)を混合した水溶液。にじみ止めや箔の接着・保護に用いる。

※開館情報につきましては、ホームページでご確認いただくか電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。

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