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佐川美術館アートコラム(82)

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滋賀県守山市

■紫式部(むらさきしきぶ)も詠んだ琵琶湖
佐川美術館
学芸員:藤井康憲(ふじいやすのり)

現在放送中の大河ドラマでもおなじみの紫式部。『源氏物語』の執筆を始めたとされる石山寺境内に大河ドラマ館が設けられるなど、県内でも盛り上がりを見せています。
滋賀県にゆかりのある紫式部ですが、彼女はどのような想(おも)いで近江の地を訪れたのでしょう。それを読み解く和歌が伝えられています。

三尾の海に 網引く民の 手間もなく
立ち居につけて 都恋しも

この歌は彼女が996年、住み慣れた京の都から越前(現在の福井県)に赴任する父・藤原為時(ふじわらのためとき)に随行した際、琵琶湖畔の三尾(みお)が崎(現在の高島市)で詠んだ歌です。
歌意としては、「この地で網を曳(ひ)く漁民が手を休めるひまもなく、立ち働いている様子を見るにつけても都が恋しく思われる」になります。当時24歳の彼女が、きらびやかな都での暮らしに後ろ髪をひかれる想いであったことがうかがえます。慣れない土地でこれから始まる暮らしに不安を抱えながらこの歌を詠んだ紫式部は、琵琶湖を眺めながら都への思慕を募らせる歌を他にも何首か詠んでいます。
琵琶湖の近くに建てられた当館は、自然美との調和も見どころの一つです。私たちにとってもなじみ深い琵琶湖を眺めながら、紫式部をはじめ歌人たちは、さまざまな想いをよせて歌を詠んでいます。時には物思いにふけり、またある時は眼前に広がる美しい景観を愛でることもありました。歌人たちに愛され続けてきた風光明媚(ふうこうめいび)な琵琶湖の風景を、改めてじっくりと見つめ直してはいかがでしょう。

※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください

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〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

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