文字サイズ
自治体の皆さまへ

佐川美術館アートコラム(85)

32/45

滋賀県守山市

■絵具(えのぐ)よもやま話

佐川美術館
学芸員:上村友理(うえむらゆり)

まだまだ暑い日が続きますが、暦の上では秋になりました。秋といえば芸術の秋、美しい景色、芸術作品、映画や音楽などから刺激を受け、無性に絵を描きたくなる人もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな時は、画材店に行くのがおすすめです。棚にずらっと並ぶ画材は、見ているだけでも心が弾みます。
画材の中でも「絵具」に注目してみると、水彩、油彩など色々あり、その形状も粉末、液体、固形、チューブ入りと実にさまざまです。その中でもなじみ深いチューブ入り絵具が生まれたのは比較的新しく、1841年にアメリカ人の画家ジョン・G(ゴッフェ)・ランドが発明しました。
それまでも皮袋や注射器型入りなどがあったものの、保存や詰め替えなど不便なところがありました。チューブ入りが一般に広く浸透したのは、不便さを解消したことに加え、19世紀の産業革命後、交通網の発達に伴い、郊外での屋外制作が画家たちの中で流行しだしたことが後押しになったと考えられます。
携行性に優れ、かつ長持ちし、常に同じ色で描けるチューブ入り絵具は屋外での制作にうってつけでした。実際、19世紀に活躍した印象派の巨匠・ルノワールは、チューブ入り絵具がなかったら印象派は存在しなかっただろうと語っています。
近代以降に芸術制作が身近になったのも、それを支える技術革新があってこそです。見慣れた画材一つにも、その背景にはさまざまな人に支えられた歴史があると思うと感慨深くなります。
*絵具商が発達する以前、画家はその時必要な分量の絵具を工房の徒弟または自身で作っていた。そのため、絵具の出来は個人の技量次第であり、現在のように安定した品質・色ではなかったと考えられます。

※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU