■研究によって変化する姿
佐川美術館
学芸員:上村(うえむら)友理(ゆり)
常に目にしていたものでも、思い出して描くのは難しいものです。詳細な資料が残されていなければ、なおのことでしょう。例えば、16世紀末に発見されてから百年足らずで絶滅したという飛べない鳥・ドードーは、復元図が変化した生き物の一つです。
かつて、モーリシャス島に生息していたドードーは、生態研究が盛んになる時代より前に人間の関与も一因となり絶滅、一時は実在したことすら疑われた鳥でした。しかし、19世紀に入り存在が再発見され、さらに『不思議の国のアリス』に登場、挿絵に描かれたずんぐりとした姿は広く世間に知られるようになります。このような容姿となったのは、ルーラント・サーフェリー作《ジョージ・エドワーズのドードー》(1626年ごろ)が関係しているといいます。資料の少ない絶滅した鳥を実際に見た可能性のある画家が描いた絵画の与えた影響は大きく、古生物の姿を科学的根拠に基づき描き起こす復元図にまでおよびます。後に復元図は描いた本人により訂正されますが、定着したイメージの払拭は難しく21世紀までかかりました。現在、研究の進歩により考えられている姿は、かつてと対照的にスリムで野性的です。
ドードーに限らず、今後も新発見や研究が進めば、外見が今と変化する絶滅動物も出てくるかもしれません。そんな可能性を持つ絶滅動物たちの絶滅理由を知ることができる「わけあって絶滅しました。展」で、今分かっている彼らの姿をぜひ見に来てください。
※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。
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