■農業って楽じゃないけど、夢があるんだ
のどかな田園都市を支える新規就農家のホンネの話
◆人があったかいから守山で就農しました
Q:本市は新規就農者が他の市町村より多いといわれます。どうして守山で就農することにしたのでしょうか。
A:新規就農者には、生まれも育ちも守山という人もいれば、他所から守山に来て農業を始めた人もいますが、「市の担当者が親身に就農の相談にのってくれた」「農地見学に行った時に出会った人が優しかった」など、人の温かさに惹(ひ)かれて守山での就農を決めました。
「地域や他の農家に溶け込めないかも」「相談できる人がいないかも」などは、新規就農を目指すときの大きな不安と課題になります。
借りられる農地を見つけるのも苦労しますが、守山では市の職員が他の農家さんを紹介してくれます。その農家さんも、自分の仕事をしながらプラスアルファの力を誰かに貸してあげようという気持ちがある。そういう農家さん同士のあったかさが感じられました。右も左も分からない私たちには、職員の熱量や先輩農家のあったかさが何より心強かったのです。
◆農家になるなら覚悟をしなさい
Q:農家は大変だというイメージがあります。農業の仕事に就いてみてどうでしたか。
A:自然が相手の仕事なので苦労はあっても「ゆったりした世界」だと思っていましたが、実際には常に時間に追われています。天候など人ではとうてい勝てない苦労もあります。ベテランになれば対処できることもあるでしょうが、経験も技術もないので悪戦苦闘しています。
農作業と一口にいっても、露地やハウスで野菜を育てる作業はたくさんある仕事の一部に過ぎません。栽培計画を立てて土づくり、種まきや苗の定植、温度管理、害虫や病気への対策、収穫、洗浄、梱包、出荷、めまぐるしいほどの作業があります。野菜は自然の恵みで鮮度が大切ですから、収穫や作業に適した時間帯も決まっていたりして本当に大変です。
確かなことは、中途半端な気持ちで覚悟がないなら、就農しても続きません。
◆苦労もあるけどワクワクして楽しい
Q:大変でも農業を選んだ。その魅力はどんなところですか。
A:農家はいわば自営業の社長。苦労しながら丹精を込めて育てた野菜も、売り先がなくては成り立ちません。新規就農の私たちは、経験も足りないけれど人手もノウハウも足りないので、自分で売り先を開拓していくしかありません。
農業は人との関わりが少ないのかな、と思っていましたがとんでもない。人と人の交流を大切にすることで「市場に不足している野菜」や「仕入れ先を探しているお店」などの有益な情報や紹介につながります。
農作業だけではなく、お金の管理もパートさんの管理も営業も、全部自分でやらないといけません。とても忙しいですが毎日ワクワクしてします。
1袋数百円の野菜を作っていてお金を稼ぐ、儲(もう)けることの大変さも実感しますが、同時にそんな農家の現状を変えたいという気概もあります。
確かに苦労も多いですが、結局「好きだから」「楽しいから」続いています。
◆私たちの夢はプライスレス
Q:大きな覚悟と夢をもって就農していると思います。その夢はかないそうですか。
A:「よい作物を育てて、おいしく食べてもらって、喜ばれる生業として成功したい」私たち農家の夢はシンプルです。そのために、いろいろな努力をしています。だから「質より安さ」を求められているな、と感じるときは少しへこみます。
農地の一部でいつもの土壌に手を加えて育ててみるなど、それぞれ、よりよい作物を育てる工夫や研究をしています。割高に感じることがあるかもしれませんが、それは手間を惜しまない苦労や人手、材料などの値段。プライスレスの夢や情熱に少しでも価値を感じてもらえたらうれしいです。
市民の皆さんに直接販売する機会として、4月からJR守山駅西口のライズヴィル都賀山前で開催される「つがやまマルシェ」に出店します。農家が愛情込めて育てた野菜を持ち寄って、作物を育てた農家の顔を見て、野菜の種類や味、旬の見分け方など、いろいろな話をしながらマルシェを楽しんでほしい。私たちだけではなく、他の農家さんも参加予定です。お楽しみに。
※記事内のAは、市内で頑張っている新規就農者の放談。参加者の声をまとめたものです。
※詳しくは本紙をご覧ください。
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