■幽談
京極夏彦 著/メディアファクトリー
「怪談」というと、妖怪や幽霊が出てくる話や、心霊スポットを題材にした奇怪な出来事という印象を持っている人も多いのではないかと思います。
本書には、別れた妻と泊まった旅館に、7年ぶりに宿泊する「手首を拾う」という話や、昔住んでいた町を訪ねる「ともだち」など、全部で8編が収録されています。どの話の登場人物も、ごく普通の町で、ごく普通の生活を送っている人たちばかりで、おどろおどろしい妖怪や幽霊が出てくるわけではないのですが、突然ふっと、得体の知れない何かが彼らの日常に入り込みます。でもその何かにおびえることもなく、そのまま淡々と変わらぬ生活を続けていく彼らの姿は、外から見ているとなんとなくぞっとします。
シリーズとして、他に「鬼談」「眩談」「冥談」もあります。日常に潜む非日常に、背筋を冷やしてみてはいかがでしょうか。
問合せ:図書館・南草津図書館
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