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KUSATSU 歴史ギャラリー No.208

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滋賀県草津市

■浮世絵へのかけはし「東海道名所図会(とうかいどうめいしょずえ)」
名所図会の始まりは、安永9(1780)年秋里籬島(あきさとりとう)が編集し、京都の版元・吉野家為八(よしのやためはち)から出版された旅の名所案内書「都名所図会(みやこめいしょずえ)」でした。大本(おおほん)と呼ばれるB4判程の大きさで、絵師・竹原春朝斎(たけはらしゅんちょうさい)によって描かれた、見開きを使う写実的な挿絵は斬新なものでした。名所情報を分かりやすくまとめた記述と、惹きつけられる挿絵のビジュアルは、それまでの実用的な旅のガイドブックを読み物に変えたといえます。見て読んで、名所に行った気分も味わえる名所案内は評判を呼び、瞬く間に4千部を売り上げる大ヒットとなりました。

庶民にも身近になった旅ブームに押されて、寛政9(1797)年、秋里籬島は、街道を舞台に「東海道名所図会」を著(あらわ)します。京の三条大橋を始点に東海道の各宿場、名所、史跡などを挿絵とともに描きながら、江戸の日本橋を終点とするものでした。出版版元は京都、大坂、江戸などの9店舗、挿絵を描いた絵師は30人にも及びます。先の都名所図会を描いた春朝斎、息子の竹原春泉斎(しゅんせんさい)、西村中和(ちゅうわ)などが名を連ね、最後を飾る江戸の日本橋を江戸の絵師・鍬形蕙斎(くわがたけいさい)が渾身の見開きページで描きました。この日本橋はまさに見どころ満載で、富士山から魚河岸まで、江戸の粋を描きこんでいるといえるでしょう。

時代は下り、天保4(1833)年頃に江戸の版元・保永堂(ほえいどう)から歌川広重の「東海道五拾三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)」が刊行され評判となります。その中で描かれた浮世絵には、東海道名所図会の挿絵を参考とした構図がいくつもあり、草津の姥(うば)が餅屋(もちや)もその一つでした。名所図会の挿絵をほうふつとさせる旅の情景を描いた「東海道五拾三次」は「東海道名所図会」とは逆ルートで、江戸日本橋から京都三条大橋まで刊行されました。江戸っ子の視点からすれば、江戸から京都へ向かう旅の浮世絵はまさに必然です。人気が出ると見込んだ保永堂のプロデューサーとしての手腕がうかがえます。

草津宿街道交流館の春季テーマ展では、名所図会から発展した旅の浮世絵を中心に、名所・旧跡などの浮世絵シリーズを世に出した版元の販売戦略を探ります。お楽しみに!

問合せ:草津宿街道交流館(草津三)
【電話】567-0030
【FAX】567-0031

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