■くま鉄の今~令和2年7月豪雨を乗り越えて~
▽過疎地域の公共交通
国鉄時代から人吉球磨地域の足として、多くの人たちを運び続けているくま川鉄道。過疎地域の最重要課題とも言える人口減少と少子高齢化の影響は、地域の公共交通にも大きな影を落としています。
くま川鉄道の主な利用者は高校生や自家用車を持たない人たち。生徒数が年々減少することで定期券収入も減少。赤字経営が続く状況となっています。
年間利用者数の推移:
▽災害とコロナ
厳しい経営状況が続く中、くま川鉄道にさらなる試練が。全世界の有り様を一変させた新型コロナウイルス感染症の爆発的な感染拡大と県南に大きな爪痕を残した令和2年7月豪雨災害です。
新型コロナウイルス感染症は、高い感染性から人の動きを制限し、公共交通機関などの経営に大打撃を与えました。令和5年5月に感染症法上の位置づけが5類となったことで、人の動きは戻りつつありますが、公共交通機関が受けた損失は依然、残されたままとなっています。
令和2年7月豪雨災害では球磨川第四橋梁(きょうりょう)の流失や保有する全車両が水没するなど、くま川鉄道も甚大(じんだい)な被害を受けました。3両を復旧整備し、現在は湯前駅~肥後西村駅間の部分運行を行っています。肥後西村駅~人吉温泉駅間は代替バスで対応中。利用者の大半が乗り換えを余儀(よぎ)なくされる状況です。
▽全線再開に向けて
令和2年7月豪雨災害で流失した球磨川第四橋梁の復旧工事が続けられています。同工事を含め、全線再開に向けて支援しているのが「くま川鉄道再生協議会」です。
同協議会では地元自治体や関係団体などの連携強化を進め、支援策や利活用促進策などの検討・協議を重ねています。今後は上下分離方式※の導入に向け、鉄道施設などを管理する新たな法人の設立やくま川鉄道株式会社から移管する鉄道施設などの整理調整などを進めていきます。
▽取り巻く環境の変化
部分運行で高校生の通学の足として再開したくま川鉄道。以前は始発から多くの高校生が乗り込む姿が見られましたが、高校の朝課外授業が無くなったことで、その風景は見られなくなりました。
人々の生活のあり方で鉄道を取り巻く環境は絶えず変化していきますが、くま川鉄道は今日も変わらず球磨盆地の中央を走ります。この風景が次の100年まで続くためには、私たちの支えが必要です。
※上下分離…線路などの施設管理(下部)と車両などの運行・運営(上部)をする組織を切り分け、下部と上部の会計を独立させること
■おはようございます行ってきます!
ファミリーマートIC店(人吉市鬼木町)前で代替バスを降りる生徒。ここから徒歩で人吉高校に
■くま川鉄道利用者の声
▽生徒にとっても、地域にとっても大切な存在
福田陽音(はるね)さん(球磨中央高3年・水上村)
入学時はバス通学でしたが、1年生の後半から部分運行が始まり、くま川鉄道を利用し始めました。友達と楽しく会話したり、車内から見る夕焼けはとてもきれいで癒されます。
くま川鉄道の存在は生徒にとっても、地域にとっても大切だと思うので、少しでも早い全線復旧を願っています。
▽親への負担が減って助かっています
尾方亮太さん(球磨工業高2年・多良木町)
黒木翔太さん(球磨工業高2年・あさぎり町)
尾方さん)くま川鉄道がなかったら、親に送迎してもらう方法しかなく、それでは親に大きな負担がかかると思うので、鉄道の存在はありがたいです。
黒木さん)鉄道のおかげで毎日楽しく登下校できています。
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