■人吉球磨で林業を学ぶ若者たち
人吉球磨地域には、林業従事者を育てる2つの学校があります。そこに通う若者に、どんなことを学んでいるかインタビューしました
▼南稜高等学校
総合農業科環境コース林業専攻3年 中原有規(なかはらゆき)さん(人吉市)
総合農業科環境コース林業専攻3年 犬童隆峰(いんどうりゅうほう)さん(多良木町)
※林業大学校…林大
▽林業を専攻した理由
中原:入学時は農業をしようと思っていましたが、1年生のときに「WOOD(ウッド)JOB(ジョブ)!~神去なあなあ日常~」という映画を見て林業に興味を持ちました。また、林業コースに進学している兄から「楽しいよ」と言われ、選びました。
犬童:父が山師、母が林木の加工場に務めていて、小さい頃から父の現場によく連れて行ってもらい、働く姿がかっこいいなと思い林業への道を選びました。
▽印象に残っている実習
中原:毎年1月にある、ジビエのバーベキューが思い出深いです。猟友会の人と一緒にわなを仕掛けて捕まえたイノシシやシカを食材に、みんなで朝から準備して食べるのは楽しく、命の大切さも感じながら親睦を深めることができました。
犬童:演習林での間伐の実習が一番印象に残っています。
▽卒業後の進路
中原:先輩が林大に進学していて、楽しく学びながら即戦力になれるということを教えてもらい、進学に興味が湧きました。親や親戚などから止められましたが、姉が「したいことをしたらいい」と背中を押してくれ、さらには周りも説得してくれたので、夢に向けて林大進学を決めました。
犬童:卒業後、林業に携わる仕事へ就職と思っていましたが、3年生の春に林大のオープンキャンパスに参加したことで、まずは林大へ進学してみようという考えに変わりました。
▽未来の林業を担う人材に
中原:木が倒れたときの達成感が好きで、林大では高校の実習よりも大きな木を切ることを楽しみにしています。女性が少ない職場ですが、豊かな自然環境を守っていけるような人材になることを目標に、多くの資格が取れるよう頑張りたいです。
犬童:体を動かすことが好きなので、重機などの機械を扱う実習が楽しみです。また、在学中に多くの資格が取れるよう、力を入れていきたいと思っています。人吉球磨の林業に貢献できるような人材になりたいです。
▽熊本県立南稜高等学校総合農業科
球磨郡あさぎり町にある高校。総合農業科では、体験活動を中心とした学習を通し、命を育て生かしていくための知識や技術、自然と調和した暮らしについて学びます。
2年次は「動物」「植物」「環境」の3つのコース、3年次にはさらに学びを深めたい「畜産」「作物」「園芸」「林業」「農業土木」の5専攻から選択できます。専門性を生かした校外活動にも積極的に取り組み、社会のあらゆる場面で活躍できるスペシャリストの育成を目指します。
▼くまもと×林業大学校
桧山拓洋(ひやまたくみ)さん(34・愛知県)
桒原竜誠(くわはらりゅうせい)さん(19・錦町)
▽林業を専門的に学ぶために
桧山:愛知県で育ちましたが、幼少期は人吉市で過ごしたこともあり、将来は人吉球磨で働きたいと思っていました。林業か半導体分野へ進むか悩んでいましたが叔父が林業の仕事をしていることもあり、未経験からでも学べる林大への入校を決めました。
桒原:中学生の頃に林業を知り、南稜高校で学ぶなかで興味が出てきました。実習で伐採したことが楽しいこと、担任の先生に林業の面白さを教えてもらったことで、林業の道に進もうと思いました。林業の仕事をするには、資格を取得して現場に出たほうがいいので林大を選びました。
▽現場で即戦力を養成
桧山:
林業について多くのことを座学と実習で学べます。例えば、「木は、呼吸をしながら光合成を行うが、高齢化し生長量が少なくなるにつれ、光合成の力が弱まっていく。年数がたつと、二酸化炭素の排出量の方が大きくなっていく」など、木が大きく育ったから伐採するという理由だけではなく、その土地の環境なども考慮して伐採する必要があることを学びました。
在学中に多くの資格を取れるので、卒業後に即戦力として働けることも魅力です。
桒原:入校してすぐは座学ばかりできつかったです。6月からは下刈りの実習でしたが、暑さと斜面での作業で大変でした。ただ、年齢関係なく和気あいあいとした雰囲気で楽しいです。高校でも伐採をする授業がありましたが、木工制作がメインでした。大学校では現場に慣れるため、どんどん伐採させてもらえるのがとても楽しく充実した毎日を送ることができています。
▽林業をなりわいに
桧山:まだはっきりとは決まっていませんが、地元の人吉球磨で林業の仕事をしたいと考えています。自分で決めた夢を叶えられるよう頑張ります。
桒原:林大の実習では木をたくさん伐採できるので、今のうちに多くの実務経験を積み、取得できていない資格を取得して林業の仕事に就きたいです。
▽くまもと林業大学校
熊本県が運営する大学校で県北・県南の2校を開校。県南校は五木村にあり、林業に必要な技術と現場力を身につけて、次世代をリードする林業の担い手の確保や育成を図ります。
毎年8月ごろには、くまもと林業大学校オープンキャンパスが行われています。詳しくは、県農林水産部森林局林業振興課【電話】096-333-2444へお尋ねください。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>