現在、全国で介護職の人材不足が大きな問題となっています。国の推計では、令和7年度には全国で約32万人が不足するそう。しかし、以前に比べると介護職の働く環境は整ってきていて、人の役に立つ実感が得られるなど仕事はやりがいにあふれています。
11月11日は「介護の日」。それにちなんで、この特集では介護職の魅力を紹介します。
■人吉市の2・5人に1人が高齢者
人吉市の高齢化率は令和6年9月末時点で38・61%。約2・5人に1人が高齢者です。高齢者独居率(高齢者が1人で暮らしている割合)は約17%、要介護認定率(介護が必要だと認定された高齢者の割合)は約16%で、高齢者の5人に1人が1人で暮らし、介護が必要な状態です。高齢者全体の数は減少傾向ですが、生産年齢人口(15~64歳)の急激な減少が見込まれることから、高齢化率は今後も上昇すると考えられます。
◇人吉市の高齢化率
約40%
2.5人に1人が高齢者
■介護のなり手も不足する時代に
現在、高齢者やその家族を支える介護人材の不足が問題になっています。国の推計では、令和7年度には全国で約32万人の介護人材が不足するとされています。介護の現場では老老介護(高齢者が高齢者を介護すること)の状態になっていて、若いなり手が不足しています。
令和7年には第1次ベビーブーム期に生まれた団塊世代が75歳以上に。令和22年には団塊世代ジュニアが65歳以上となり、全国の高齢者数はピークを迎えます。医療・介護が必要な高齢者が増加する一方で、生産年齢人口は減少するため、若い世代の介護人材の確保はさらに難しくなります。
◇人吉市の高齢化率の推移と予測
※第9期熊本県高齢者福祉計画・介護保険事業支援計画(熊本県)
人吉いきいき高齢プラン(人吉市)
■介護の現場から
介護の現場で働く若者に、介護職の魅力やきっかけについて聞きました。
●小松 真士(こまつ まさし)さん(32)
(個室ユニット型特別養護老人ホーム 聖心ホーム)
◇兄や姉の背中を追って
介護の世界に入って約5年です。高校卒業後に愛知県に就職しましたが、結婚を機に帰郷。姉が看護師、兄が介護士をしている影響もあり、何か人の役に立てないかと考え、今の職場に就職しました。小さい頃からおじいちゃん・おばあちゃん子だったことも理由の1つです。
現在は、利用者が起床してから就寝するまでの食事や入浴、排せつなど日常生活の介助をしています。利用者の中で特に認知症の人は、日によって状態にむらがあるので様子を見ながらその時々に合わせた対応をするように心掛けています。認知症は、私たちの話し方や対応次第で症状の進み具合が変わります。そこで、認知症の進み具合をいかに緩やかにできるかを考えて、日々業務に励んでいます。
数カ月前までは今とは違う部署にいたのですが、以前関わっていた利用者から「どこに行っとったんね!」と言われた時は、自分のやってきた対応が間違っておらず、必要とされているんだとやりがいを感じました。
人が相手の仕事なので大変なこともたくさんありますが、人生の先輩から貴重な話が聞けて、学びにもつながるのでとても魅力的な職業です。私には幼い3人の子どもがいますが、子育ての経験を介護の現場で活かすことができ、子どもたちは仕事の活力源にもなっています。
◇正解がないことがやりがい
以前は工場で働いていて、マニュアル通りに仕事をすればよかったのですが、介護には正解がありません。利用者一人一人の性格やその日の状態で対応は変わりますし、やり方は人それぞれ。今までの経験や先輩たちから学んだことを参考にしながら、自分が納得し利用者にも満足してもらえる正解を見つけるようにしています。学ぶことが多い毎日ですが、それもやりがいや楽しさの1つではないでしょうか。介護の経験がない人でも半年間研修を受け実務を3年間経験すれば、介護福祉士の資格を取得できます。笑顔がすてきで優しく、パワフルな人はぜひ介護士になってみませんか。
●植田 美咲希(うえだ みさき)さん(32)
(小規模多機能型居宅介護事業所 菜の花)
◇高校生の頃からの経験を生かして
介護の世界に興味を持ったのは高校生の時。多良木高校(球磨郡多良木町)の福祉科で学んでいて、老人ホームを訪問したり、ボランティアに参加したりとお年寄りと接する機会が多く、介護に携わる仕事を志しました。今の事業所に入ってまだ5カ月ですが、それまでは人吉市社会福祉協議会や訪問介護のパートなどで約8年間勤務していて、介護の世界には高校生のときからずっと携わっていることになります。
仕事の内容は、入浴や食事といった日常生活の介助に加えて、レクリエーションの企画や利用者の送迎などです。利用者一人一人に寄り添い、残された能力を最大限に引き出しながら「今」を心地よく、生き生きと生活するためのサポートを心掛けています。中には意思疎通が難しい人もいますが、そういう人には相手の気持ちや立場に立って考えるようにしています。
利用者の家族との関係も大切です。要望を丁寧に聞くことはもちろん、日中の様子や細かい気づきなどはしっかり伝え、安心して利用してもらえるよう心掛けています。
◇感謝の言葉があふれる職場
人生の先輩から貴重な話を聞いて、その人の心に触れることができるのは、ほかの仕事では決して味わえません。さまざまな背景を持つ人たちから、学びや知識を得ることができるのは最大の魅力です。介護は自分自身を成長させてくれる仕事だと感じています。
また、介護の仕事は「ありがとう」や「またお願いね」といった感謝の言葉でつながっています。感謝の言葉は、私たちに元気や喜びを与えてくれるとともにやりがいにもつながります。このような言葉が飛び交う現場で働くことができるのも、この仕事の醍醐味(だいごみ)ではないでしょうか。
若い人には敬遠されるかもしれない職業ですが、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができますし、経験がなくても実務を経て資格を取得することでキャリアアップができます。人と話すのが好きな人や、おじいちゃんおばあちゃんが好きな人など、介護の仲間が増えることを期待しています。
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