■日常生活の中に潜む小さな差別の芽~マイクロアグレッション~
◇「マイクロアグレッション」とは
「小さな」「微細な」を意味する「マイクロ」と「攻撃」を意味する「アグレッション」を掛け合わせた言葉で、口にした本人に、誰かを差別したり、傷つけたりする意図があるかないかは関係なく、特定の人たちを軽視したり、侮辱するような敵対・中傷・否定のメッセージを含んだ言動を指します。
例えば、これまでに次のような発言をしたことはありませんか。
(1)外国人の容姿をしている人が日本語を話しているのを見て、「日本語お上手ですね」
(2)「女子なのに数学が得意ってすごいね」
(3)「高齢者にITの操作は厳しいよね」
(1)、(2)の発言は、一見、ほめているように聞こえます。しかし、(1)の場合、受け手が日本人の容姿をしていなくとも、日本で生まれ育った日本人であった場合はどう感じるでしょうか。日本人なのに外国人扱いされる不快な気持ち、想像できますか。また、(2)の発言には、女性は理数系が不得意という無意識の偏見が隠れています。
(3)の発言は、高齢者をひとくくりにして見下しているメッセージが含まれています。
こういった発言は、発言者は初めて発したものであっても、受け手は何度も同じようなことを言われているケースが多く、結果として受け手は何度も傷つくことになります。
◇マイクロアグレッションは、なぜ起こるのでしょうか
マイクロアグレッションは、誰もが加害者の立場にも被害者の立場にもなる可能性があります。これを引き起こしているのは、男(女)はこうあるべきとか、外国人の容姿をしている人は外国語しか話せないはずといった、思い込みや偏見・差別が社会に根強く存在しているからです。個人の内面に刷り込まれた思い込み、偏見・差別が会話や態度に表れたとき、それがマイクロアグレッションになるのです。
◇マイクロアグレッションを放置するのは危険です
マイクロアグレッションの特徴は、発言者が無自覚(悪気がない)であるため、日常的に繰り返されてしまうということです。
一つひとつは小さな出来事でも、日常生活で何度もマイクロアグレッションの被害にあうと、受け手は、自分自身への否定的な感情やストレスと孤独感などで、心身の健康を害したりすることがあります。また、教育や雇用の場での不平等につながることも指摘されています。
また、マイクロアグレッションを放置しておくと、やがてはジェノサイド(※1)やヘイトスピーチ(※2)などの暴力的な差別行為や社会的排除と言った、きわめて重大な人権侵害をもたらす可能性もあります。
◇マイクロアグレッションは防いでいける
マイクロアグレッションを防ぐポイントは、
(1)知る(学ぶ)こと
(2)自分の中にある差別心を自覚すること(気づくこと)
(3)マイクロアグレッションを指摘されたら、素直に受け入れ謝罪し、改善すること、です。
マイクロアグレッションを恐れて、人との会話に臆病になる必要はありません。むしろ、様々な人と関わって、多様な価値観に触れ、「これは相手を傷つけてしまう可能性がある発言なんだ」と知れば、自分の中に潜む思い込みや偏見・差別に気づくことができます。そのように、一人ひとりが変わっていくことで、誰にとっても生きやすい共生社会を築くことができると思います。
※1 国民的・人種的・民族的または宗教的集団の全部、または一部を破壊する意図をもって行われる、殺害または危害などを加える行為
※2 特定の民族や国籍の人々を排斥し、不安や差別意識をあおる言動
参考資料:「知らずに相手を傷つけてしまう言動「マイクロアグレッション」を防ぐには?専門家に聞いた」(日本財団ジャーナル)
問合せ:生涯活動推進課 生涯学習係
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