宇土にルーツを持つ台湾の“英雄”湯德章(とうとくしょう)が結ぶ台南市との友好交流

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台湾南西部、現在の台南(たいなん)市玉井(たまい)区出身の弁護士・湯德章氏(日本名：坂井德章)をご存知でしょうか。
宇土出身の父と台南出身の母との間に生まれ、様々な困難を乗り越えて弁護士となり、台湾人の人権を守るために尽力した人物です。
二・二八事件※により40歳という若さで命を落としましたが、激しい拷問を受けても事件にかかわった人々の名簿の提出を拒否したとされ、多くの市民の命を救った“台湾の英雄”として知られています。

■台南市における顕彰
台南市政府は、人権派弁護士として活動した德章氏を顕彰するため、様々な取組みを行っています。二・二八事件で德章氏が公開処刑された公園(旧称・民生緑園)を、1998年に「湯德章紀念公園」と改称し、同地に德章氏の胸像が建立されました。また、5月から台湾総統に就任予定の頼清徳氏が台南市長時代の2014年、德章氏の命日である3月13日が台南市の「正義と勇気の紀念日」に制定されています。

■歴史がつなぐ台南市との友好交流
德章氏の父・坂井(新居(あらい))德蔵(とくぞう)氏は、約130年前の明治時代に宇土から日本統治下初期の台湾に渡りました。警官として台南の治安維持にあたり、現地で妻の湯玉(とうぎょく)氏と出会い德章氏が誕生しました。
このような歴史的な縁から、宇土市では、台南市と教育や文化、経済分野などでの活発な交流を目指し、昨年12月に谷﨑副市長を団長とする訪問団が台南市政府を表敬訪問しました。趙卿惠(ちょうきょうけい)副市長をはじめとする政府関係者との意見交換後、市内の湯德章故居(旧宅)や湯德章紀念公園などの德章氏ゆかりの地を視察しました。

■3月に訪問団が訪台
この訪問をきっかけとして、3月に元松市長を団長とする宇城三市町(宇土市・宇城市・美里町)と熊本県の行政・民間関係者で構成される訪問団の現地訪問が決定しました。3月13日に開催される「正義と勇気の紀念日」式典に出席するなど、台南市との友好交流を更に進める予定です。

※二・二八事件1947年2月に台北(たいぺい)市で発生し、台湾全土に広まった反政府暴動。援軍として中国から派遣された国民政府軍により鎮圧された。18,000人〜28,000人の台湾人が命を落としたとされるが、正確な死者数は不明。混乱に乗じて数多くの知識人や文化人が意図的に殺害された。

■STORY
▼台湾でドキュメンタリー映画公開
3月15日からドキュメンタリー映画「尋找湯德章」が台湾で一般公開されます。企画から公開まで5年をかけた労作で、令和4年10月に宇土市でも撮影が行われました。

▼湯德章ゆかりの地
○旧台南地方法院
德章氏が弁護士時代に通った裁判所。日本統治時代の台湾での三大建築の一つ。現在、台南司法博物館として公開されています。

○二・二八事件紀念館
德章氏が参議会議員として活動した旧台南州参議会の建物をリニューアル。二・二八事件について学ぶことができます。

○旧台南警察署
德章氏が警官時代に勤務しました。日本統治時代に建築された建物で、現在は台南市美術館として利用されています。

○湯德章故居
弁護士時代の事務所兼住居。2022年、民間団体の台南市文化資産保護協会が購入。現在、記念館としてリニューアルするため、整備工事が進められています。

○湯德章紀念公園
毎年3月13日、胸像の前で「正義と勇気の紀念日」式典が開催されます。

○湯德章大道
2022年、台南市政府は湯德章紀念公園から西側に伸びる中正路の約170m区間を「湯德章大道」と改名しました。

■TOPIC　湯德章関連年譜
1907年(明40)　現・台南市玉井区で誕生
1915年(大4)　抗日反乱(タパニー事件)で父・德蔵が殉職
1927年(昭2)　台南州警察官採用
1935年(昭10)　叔父・坂井又蔵と養子縁組し、坂井姓となる
1939年(昭14)　警察を退職。又蔵を頼って家族と東京へ転居中央大学聴講生として法律を学ぶ
1942年(昭17)　高等文官試験司法科(司法試験)合格
1943年(昭18)　台南に戻り、弁護士事務所開設
1945年(昭20)　終戦。日本に代わって中華民国が台湾を統治
1947年(昭22)　二・二八事件により民生緑園(現・湯德章紀念公園)で公開処刑

参考著作：門田隆将『汝、ふたつの故国に殉ず-台湾で「英雄」となったある日本人の物語-』角川新書2016年

■EVENT　パネル展「湯德章と台南」
德章氏の功績や生まれ育った台南の歴史・文化などを紹介するパネル展「湯德章と台南」を、宇土市役所1階市民交流スペースで開催します
日時：3月19日(火)～5月6日(月)
平日8：30～20：00
土・日・祝日8：30～18：00

〔詳細は本紙またはPDF版をご覧ください〕