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[特集]自然と共に生きる農業(1)✕宇輝人 vol.88

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熊本県宇城市

-有機農業 澤村 輝彦-

■自然を守れる農業に
不知火町を中心とした5ヘクタールに及ぶ広大な土地で、農業を営む澤村輝彦さん。最盛期は1日6トンもの収穫量を誇るトマト農家だ。その全てが農薬や化学肥料を使わず、自然の力で作られる。
澤村さんは農業大学校卒業後、父親の下で漁業や農業を学んでいたとき、水俣の人々と出会う。「水俣病自体は耳にしていたけど、その苦悩や一生取り戻せない体という現実を知り、自然を守れる農業にしなければと感じました。」と決心した。
その後、30歳で全ての農地を有機農業に転換。平成10年には、有機栽培で自立できる農業を目指し、「肥後あゆみの会」を結成した。自然災害や生産の難しさから、数年は苦しい経営状態だったものの、土壌づくりに目を向け、肥料を自社生産。独自の有機栽培技術を確立させた。
「スプーン1杯の土の中には1億ほどの微生物がいて、バランスの取れた栄養を与えて活性化。有機の力で植物の免疫力を高めます。植物も人間と同じ。人間が食べられる天然のものしか使いません。米ぬかに小魚やカキの殻、エビやカニ、昆布、そして菜種油を絞ったかすなどを発酵させて肥しにします。口に入れるものと一緒なんです。」

■思いが自然の恵みを届ける
現在は、産山村にも拠点を置く。年間を通して安定して生産できる体制を整え、関東や関西などの都心域に出荷する。
「これだけやっても終わりがない。何度も失敗していますが、難しいから面白いんです。」
宇城地域の生産を担う息子の光大(こうだい)さんは「父は夢への思いが強い。言葉には人を動かす力がある。」と憧れつつも、独自のやり方を模索し、偉大な背中を追う。
有機は通常生産より多少値は張るが、その味を楽しみにするファンも多い。澤村さんはそんな有機の魅力を地域の人たちにも知ってほしいと、集落の畑を借りて、地域の人たちが楽しめる農場も作っている。
100年後の子どもたちに安心なものを届けたい――。大自然に感謝して恵みを届けていく。

■澤村 輝彦 Sawamura Teruhiko
昭和35年不知火町生まれ、在住。同55年農業大学校卒業後、就農。平成2年に有機農業に転換し、トマトや米、露地野菜を生産する。熊本県有機農業研究会に所属し、同10年には有機農業グループ「肥後あゆみの会」を結成。令和4年には県の農業コンクール地域農力部門で最優秀賞を受賞した。

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