「地域福祉」とは、住み慣れた地域で、誰もが自分らしく安心して日常生活を送れるよう、地域住民、各種団体や行政などがつながり、協力して取り組むことです。
近年、少子高齢化や人口減少、核家族化、高齢者世帯の増加、ライフスタイルや家族形態の多様化などを背景に、地域社会のつながりや、地域に対する関心の希薄化が問題になっています。令和6年度に市で行ったアンケートによると「近所との付き合いはどの程度か」の問いに対し「挨拶する程度の付き合い」と回答した割合が平成25年から半数以上を占めています。
加えて、コロナ禍による社会活動が制限されたことで地域生活における日常的な関わりの機会が減少し、人と人とのつながりがさらに薄れてきたことも影響し、「ほとんど(全く)付き合いがない」と回答した人は平成31年度の2倍以上という結果になりました。
こうした地域福祉の課題解決のため、民生委員制度、地域おこし協力隊制度を活用した取り組みが行われています。
今回は、人と人をつなぐ地域の担い手として活動する民生委員と地域おこし協力隊の活動をご紹介。皆さんの身近な地域のことについて少しだけ考えてみませんか。
■地域の担い手民生委員 地域で支え合う_。
◆民生委員
担当の区において住民からの生活上の困り事や心配事の相談に乗り、必要性に応じて行政や専門の機関への「つなぎ役」を担う。民生委員は地域の子どもを見守る「児童委員」も兼ねている。
また、一部の児童委員は児童に関することを専門的に担当する「主任児童委員」の指名を受け、民生委員・児童委員と関係機関との連絡調整や、児童委員としての活動の援助や協力を行う。
◇社会福祉課 地域福祉係 課長補佐 菅 いずみ
・民生委員の役割って? 地域と行政の橋渡し
民生委員、児童委員および主任児童委員は、民生委員法および児童福祉法に基づき、厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員として活動している人たち。高齢者や児童の見守り活動などを通して、地域と行政の橋渡しとなる重要な存在です。
民生委員は行政区長から市へ民生委員候補者の推薦を受けて、市の民生委員推薦会で選考されます。
任期は1期3年。来年度は任期満了に伴う一斉改選が予定されています。
◇ー民生委員 5年目ー 川島 毅(たけし)さん(73)
・人の役に立つことを
私は、長いこと福祉関係に携わってきた地区の人から声が掛かり、子どもの頃から住んでいる地域の役に立てればと思い、民生委員を引き受けました。一人暮らしの高齢者から夜中に電話がかかってきて、飛び起きて自宅を訪問し、病院に付き添ったこともありました。
そのような活動の中でも、住民の皆さんから「あなたでよかった」「あなたが頼りだから」と感謝の言葉をいただくたびに人の役に立っていると実感できます。活動を通して逆に自分が励まされますし、やりがいとなっています。
高齢者に限らず、お子さんのことなどで心配なこと、困っていることがあれば、いつでも話を聞かせてほしいです。必要に応じ、主任児童委員とも協力しながら、一緒に考え、取り組んでいきたいと思います。
・地域で支え合う大切さ
社会や家族の在り方が複雑化し、人々の考え方や意識も変化しています。さらには、地域住民同士の人間関係の希薄化やプライバシーの問題などもあり、地域が抱える問題そのものが見えづらくなります。
そんな時代だからこそ民生委員の存在は重要であり、地域の皆さんからの情報が必要です。空振りになっても構いませんし、誰が言ったと明かすこともありません。「ひょっとして」「もしかしたら」、そんなちょっとした気付きや情報を民生委員に提供していただくとありがたいです。
それらの情報を地区のリーダーと共有し、より安全で住みやすい地域づくりにつなげていきたいと思います。
また、各地区ではさまざまな行事が行われており、地域住民同士のコミュニティーの場に関わることは民生委員として大切なことですが、中にはその運営に関する業務で負担を感じているケースもあります。
仕事や介護をしながら頑張っている民生委員が活動を続けていくためにも、地域の皆さんの理解やサポートも必要になります。
他人事と思わず我が事として、「自分たちの地域は自分たちで支え合う」意識を一人でも多くの人が持てば地域はもっと良くなる、そう思います。
◇voice
何でも相談できる心強い地域の味方
菊池 允子(のぶこ)さん(86)
6年前から1人暮らしをしており、民生委員の川島さんが定期的に訪問してくれます。やはり1人では心細いので川島さんが訪問してくれると安心感があり、とても心強いです。
最近は何かと物騒なので、最近の犯罪事例の資料などを配って注意喚起もしてくれます。地域の世間話から自身の近況、体調のことまで何でも話せるくらい近い存在で助かっています。
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