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地域の農業を守る農事組合法人

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熊本県氷川町

5月31日と6月1日の学校給食のメニューに、じゃがいもを使ったシェパーズパイとうま煮が登場しました。使われたじゃがいもは、5月25日に農事組合法人野津南から寄付されたものです。寄付の総量は約100キログラム。新型コロナウイルス感染症の影響で中断はあったものの、寄付は5年以上続けられています。
町内には、この農事組合法人野津南と同じように、地区で活動する「農事組合法人」が6つあることをご存じでしょうか。どのような背景で法人が立ち上がり、現在どのような活動を行っているのかをご紹介します。

■農事組合法人として活動する理由
国が実施する農林業センサスの結果を見ると、農業従事者数は、平成27年から令和2年までの5年間で全国で約40万人減少しています。進む高齢化や農作物の安定生産の観点からも、農業人口の減少は、長年続く農業の課題の1つです。
こうした農業の担い手の減少は、耕作されない農地の増加にもつながります。管理されない農地は、景観の悪化を招くだけでなく、害虫が発生したり、野生生物のすみかになったりと、近くの農地にも悪影響を及ぼします。
地域の農業を維持していくためには何か手を打たなければ―そうした課題解決に向けて始まった取り組みの1つが「農事組合法人」を立ち上げることです。
農事組合法人では、農業者が個人経営ではなく、それぞれの地区で法人として人材、資産、資本を集めて効率的に経営を進めていきます。具体的には次のようなメリットが期待されます。

■農事組合法人として取り組むメリット
▽農地の集約化
バラバラで管理していた個人の農地が法人に集約されるため、作業が効率化されます。また、農業を辞めることを考える場合にも、法人が農地の担い手となるという選択肢が増え、耕作放棄地の減少も期待できます。

▽機械利用の効率化
法人として経営を一本化できるため、必要な機械や設備を個人で整備する必要がなくなります。法人の機械を共有することで、大きなコスト削減につながります。

▽新たな取り組み
新規作物や最新の農業機械の導入など、個人では費用面、労力面から取り組みにくいことにも、法人で一体的に取り組むことができます。地域全体の農業の維持発展の大きな力となります。

■法人独自の取り組み
6つの法人は、もち米やWCS(※1)の栽培を中心に活動しています。その一方、法人独自の取り組みも多く見られます。それぞれの代表の方に、お話を聞きました。

▽アグリ吉野
平成28年3月設立
コストがかさんでしまいがちな農薬なども大型規格のものを採用し、生産費の削減につなげています。
本田 隆雄(たかお)さん

▽アグリ鹿島
平成29年2月設立
労働時間の短縮と低コストを実現するため、苗づくりから田植えまで新しい技術を試験的に導入しています。
中村 辰弘(たつひろ)さん

▽野津南
平成28年3月設立
新規作物のじゃがいもの栽培に取り組み、学校給食への寄附を行うなど社会貢献活動も行っています。
村上 惠(めぐみ)さん

▽肥の川南
平成30年2月設立
排水対策や田植えの方法など、新たな技術を積極的に取り入れています。新規作物の小麦や大麦若葉などはその作付けを年々増やしています。
平岡 英康(ひでやす)さん

▽令和きたかの
令和2年2月設立
水稲を法人直営で栽培しています。法人として取り扱う面積は、6つの法人の中で最大規模です。
那須 逸郎(いつろう)さん

▽東網道
令和元年6月設立
法人専属のオペレーター(※2)が6人いることで機械操作技術が向上し、それに伴い作業の効率化や省力化がより図られています。
永田 敬介(けいすけ)さん

(※1)WCS(ホールクロップサイレージ)
稲の穂と茎葉を同時に刈り取ってロール状に成形したものをフィルムでラッピングして乳酸発酵させたもの。主に牛の飼料として利用されます。
(※2)オペレーター
農作業の一部を請け負う人のこと。機械を使い、田植えや稲刈りなどの作業を行います。

■残る課題へ一丸となって
氷川町では、平成28年の2つの法人の設立を皮切りに、現在までに6つの法人が活動を行っています。取り組みが始まって7年。地域の農業を維持していくために、地区の課題と向き合いながらさまざまな活動が続けられてきました。
農業機械の共同化はどの法人でも進み、大きなコスト削減が図られていますし、新規作物の導入により、その作付面積を年々増やしている法人もあります。しかし、高齢化や担い手不足による影響は大きく、それぞれの法人の取り組みだけでは、全ての課題に太刀打ちできていないのも現状です。
そこで平成31年に、各法人の連携や町全体の農業の発展を目指し、氷川町農事組合法人連絡協議会が設立されました。法人の抱える課題は、町の農業全体が抱える課題でもあります。協議会を中心に地域の農業を守るための取り組みが今後ますます進められていきます。

■今月の表紙
6月15日、農事組合法人令和きたかのの田植えが行われました。随時連絡を取り合いながらの連携した作業で、約9町(約1ヘクタール)の田んぼにWCSなどの苗が植え付けられました。

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