■第7回 五穀豊穣を祈るまつり
□肥後神楽
肥後神楽は、熊本県北一帯を中心として県内に広く伝承されており、豊作へのお礼と五穀豊穣を祈願して奉納されるものです。菊池川流域では現在52カ所。そのうち玉名市内では現在19カ所で伝承され、主に10月中旬から12月初旬にかけて各神社の秋祭りなどで奉納されます。
玉名市内の肥後神楽は、元は神職によって行われていたと考えられ、お面を着けず、手に道具を持って行う舞が主で、お面を着ける舞は一つしかありません。右手に鈴、左手に剣や弓、榊(さかき)、御幣(ごへい)を持ちます。この持ち物によって衣装が異なり、剣や弓のときは直垂(ひたたれ)、榊や御幣のときは狩衣(かりぎぬ)を着ます。お面を着ける舞は鬼人が登場する舞だけです。この舞は玉名では「ゴダン」、横島では「二天(にてん)」と呼びますが、他地域では「国津(くにつ)」と読んでいます。玉名市内の肥後神楽は、基本的な構成は肥後神楽であるものの、独自の特徴を有する神楽となっており、玉名市重要無形民俗文化財に指定されています。
□梅林天満宮流鏑馬
馬上から弓矢で的を射る流鏑馬(やぶさめ)は平安時代から存在し、江戸時代に神事として奉納されるようになったと言われています。玉名市津留にある梅林天満宮では例年11月25日に行われる例大祭に際し流鏑馬が奉納され、地元では「ヤクサンドン」と呼ばれ親しまれてきました。下(しも)・安楽寺・津留の3地区の氏子が輪番で奉納しており、祭りに参加する乗り手・仲間(ちゅうげん)などの衣装はそれぞれの地区によって異なります。
11月23日、祭りの世話役を務める節頭(せっとう)らの精進小屋入りに始まり、24日には菊池川の水で身を清める汐取りを実施。25日の夕刻にいよいよ流鏑馬が奉納されます。矢と的の一部は、縁起物として観客が持ち帰ることが許されており、観客は競い合って取り合い持ち帰ります。26日には御神体を次の節頭区へと引き継ぐ節頭渡しが行われ、全ての神事が終わります。
熊本県下で流鏑馬の奉納を行っている神社は複数ありますが、農村に伝わる流鏑馬として精進小屋入りから節頭渡しまでの一連の神事を現在まで継承しているのは梅林天満宮だけであることから、熊本県重要無形民俗文化財に指定されています。
□大浜住吉神社年紀祭
大浜住吉神社年紀(ねんき)祭は、玉名市大浜町の大浜外嶋住吉神社で約10年に1度、5月上旬から中旬頃に開催される祭りで、五穀豊穣のほか、年貢米や農産物を大坂(現・大阪府)へ運ぶ船の航海安全と豊漁を祈願するためのものといわれています。
数日間に及ぶ祭りのクライマックスは、菊池川の河口を遡る水上神事です。御座船(ござぶね)3艘に、大漁旗や紅白幕で飾る櫂伝馬船(かいでんばせん)が3艘ずつ連なります。「ホーランエンヤ」の掛け声と、太鼓に合わせた漕ぎ手の櫂さばき、「剣櫂踊(けんがいおど)り」や「采振(ざいふ)り」は圧巻で、大きな見どころの一つです。江戸時代中後期、大浜町が廻船問屋の町として発展し、文化的、経済的に大きく繁栄したことが祭りの内容からうかがえ、玉名市重要無形民俗文化財に指定されています。
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