地域おこし協力隊 種子島奈里
夏から秋にかけて咲く「アサガオ」。玉名には、この花によく似た工芸品があるのをご存じですか。豊かな時代が築かれ脈々と受け継がれる伝統がある一方で、姿を消した〝地域の財産〟もありました。今月は、玉名の女性たちをときめかせた「高瀬しぼり」を取材しました。
◆染めの原点〝高瀬しぼり〟
江戸時代の高瀬地区の特産品「高瀬しぼり」。白地の木綿を糸でくくって染め抜いた〝アサガオ〞のような柄が特徴です。昭和初期ごろまでは、女性の下着の柄に使われていましたが、手作業の染織は多くの謎を残して姿を消しました。新聞記事で高瀬しぼりの存在を知った下川冨士子さんは郷土史家たちと協力して研究を開始。日本中で聞き取り調査を行いました。しかし、下着として使用されていた高瀬しぼりは再利用の末に処分されどこの家庭にも残っておらず試作品を作ってお年寄りの記憶とすり合わせるという作業が繰り返されました。
その結果たどり着いたのは、復元の成功と「高瀬しぼりは日本最古」という答えです。
復元から30年。下川さんは「染めは高瀬に始まった。再び途絶させてはいけない」と、研究会を立ち上げました。小学校などで体験会を開いたり観光列車の乗客にPRしたりして、玉名の財産と技術を守りながら「高瀬しぼりを〝衣文化〞の一つとして捉え、玉名が発祥の地だということを忘れないでおいてほしい」と活動しています。
◇高瀬しぼり木綿研究会 会長 下川冨士子さん
豊かな玉名が築かれた背景には、物のない時代を必死に生きる女性たちの姿がありました。肥後もっこすの男性たちに仕えながら、高瀬しぼりの下着を身に着けた玉名の女性たちがどれほど心をときめかせ、したたかに喜んでいたか…。この思いを想像して、未来へ繋いでほしいです。
88歳の下川冨士子さん。30年間、試行錯誤しながら作り続けた高瀬しぼりの〝集大成〟となる展示会が開催されます。
◇下川冨士子とその仲間たち展
期間:7月17日(水)~21日(日)
場所:熊本県立美術館 分館
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