清岳こう文庫からおすすめの詩人を紹介します
◆斎藤澄子
知性の詩人、それも、とびっきり柔らかな知性の持ち主です。その魅力は飛んだり跳ねたりする言葉にあります。誰もが深い悲しみと絶望を抱えている時、肩の力が抜ける魔法の力を持っている詩篇の数々。『山野さやさや』では、山に野に吹きわたるこの世の風、その過酷とそれを生きる詩人の潔さ。「山野」のリズムのたゆたいは二月の女神のリズム、「いきなりの声かけはご遠慮、、、」の破調がとても効果的です。「爪」も一行目から衝撃力を帯びていて、句読点を伴いながら「爪は骨ではない」が刻印されていく力わざ、シェークスピアの荒野の魔女の呪文かとも思います。「ヒレを持つ者」オーライオーライが面白く「オフィーリア、、、、」の終連が印象的、「すすきの原」の音韻も忘れがたいものがあります。
▽推薦詩篇
・「それで」「ところで」「さて」『世紀末の接続詞たち』 砂子屋書房
・「山野」「爪」『山野さやさや』
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