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人権・同和教育シリーズ(217)

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熊本県菊池市

■多様性社会を築いていこう
地域人権教育指導員 中原博昭(なかはらひろあき)

□私からはじめる私たちの多様性社会
市は、7月22日に「第19回菊池市人権・同和教育研究大会」を開催し、公益財団法人とよなか国際交流協会の三木幸美(みきゆきみ)さんに講演していただきました。
幸美さんは、1991年、大阪の被差別部落でフィリピン人の母と日本人の父の間に生まれ、8歳で日本国籍を取得するまで無戸籍・無国籍児でした。懸命に働くご両親は、在留資格の更新手続きの仕方や相談窓口が分からないまま、幸美さんを出産。出生届を提出して幸美さんの存在が分かると、家族がバラバラになる恐れがあったのです。無戸籍・無国籍児が生じてしまうのは、3つの壁が社会にあるからだと話されました。(1)法律・制度の壁(2)言葉の壁(3)心の壁この3つです。

□心の壁
(1)と(2)については、(3)を中心に語られる中で、壁という言葉の意味が明らかになりました。フィリピンから働きに来たお母さんは、出入国管理法の決まりが理解できなかったそうです。日本語を使って暮らすことはできても、相談するために日本語を使いこなす力はなかったと話されました。
日本社会の慣習や行政のシステムなど、知識が全くない中、衣食住など暮らしに関わる話は近所の方が教えてくれたそうですが、行政に相談できるほどの言語運用能力はなかったと語られました。

□多様性社会を築くために
幸美さんが進路選択の時期を迎えた時、入試制度も学校の情報も理解できなかったお母さんに、ただ「ごめんね、ごめんね」と泣きながら謝られたそうです。普段、懸命に働き生活を支えているお母さんのその姿に、「なんで、少数者(マイノリティ)は、こんなに頑張らなきゃならないのだろう」と、幸美さんは人権について考え始めます。
その後、ハーフであることや被差別部落出身であることを現在のパートナーにカミングアウトしました。パートナーは、「関係ないから」や「大変だったね」などの慰めの言葉ではなく、「これからのことは、僕も一所懸命に考えるから。僕も頑張るから」と返してくれました。
差別をなくそうと共に考えるなかまがいることが、幸美さんの行動力の源になっているそうです。そして、「『私』が暮らしやすくなるだけではなく、『私たち』が暮らしやすい社会をめざすことで、多様性社会に近づくのではないか」と講演を締めくくられました。
アンケートでは、パートナーと幸美さんの会話に多くの感想が寄せられました。差別をなくしていくために、差別が社会に存在することの責任を自分と切り離さず、引き受けていくというパートナーの言葉に共感している人が多いと感じました。

問い合わせ先:人権啓発・男女共同参画推進課
【電話】0968-25-7209

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