■Scene1 プロローグ
今を創る、未来を耕す
どこにでもある中山間地の一つ、菊池佐野区―。とあるきっかけで始まった学生との交流が多くの住民を巻き込み、活気が生まれました。地域は刺激を、学生は学びの機会を得るなど、手探りながらも双方にメリットのある活動が続いています。
少しずつ歩み寄り、つながっていった地域と若者たちの軌跡を追いました。
◇山あいの集落が明るくなった
「収穫した後のワラはどうするんですか」
「くくって牛のエサにするんよ」
爽やかな秋空の下、農作業にいそしむ住民と学生たち。隈府から北東約4キロ先の山の中にある菊池佐野区では、熊本大学のボランティアサークル「D-SEVEN」との交流が続いています。
きっかけは平成28年熊本地震で被災した市内での復興ボランティア活動。現在も月1回、10人程度が農作物の収穫や草刈りなどの協力に訪れます。
「初めは若い子と何を話していいかわからなかったけどね」と笑うのは、当初から交流に関わってきた渡辺勝則(わたなべかつのり)さん(菊池佐野)。「学生が来てくれるようになって佐野は明るくなった。本当に感謝しているよ」
◇頼もしい学生たち
菊池佐野区は人口70人程度の小さな集落で、高齢化率は57パーセントを超えます。農家の年齢は70代が多く、一番若い人でも47歳。コメとクリが主な農産物で、山や農地、棚田に囲まれた中山間地の一つです。
「学生たちのアイデアや発想はいつも頼もしい」と渡辺さん。農業ボランティア活動や地域イベントの企画、収穫体験など交流機会は広がり、今では交流人口の増加や地域活性化へとつながりました。
7年以上続く地域と学生との交流は、住民の地域活動の原動力になっています。
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