■Scene3 変わり始めた地域
変わり始めた小さな集落
「おれらももっと頑張らんといかんよな」ー。
学生たちに背中を押され、変わり始めた住民たち。地域の課題解決に向けて、菊池佐野区の新たな挑戦が始まりました。
◇必要だった農業法人設立
「集落を存続させていくために、学生との活動を続けていくためには、自分たちが変わらんといかんと思った」と話すのは、農事組合法人菊池佐野の理事・渡辺勝則(わたなべかつのり)さん。当初から学生との交流に深く携わってきました。
小規模農家が多く、高齢化も進んでいた菊池佐野区。後継者不足による耕作放棄地増加に歯止めをかけるための農業法人化は進んでいませんでした。
また、学生との交流を続けるためにも体制整備が必要でした。「最初は数人の農家で受け入れていたけど限界があった。交流を続けていくために法人を設立したんよ。学生たちに背中を押してもらったね」と笑顔を見せます。
平成30年に農業法人を設立。高齢者の負担を軽減するため大規模農機を導入し、作業の効率化を図りました。
◇菊池佐野区の新たな挑戦
現在、菊池佐野区では地域内で受け継がれてきたクリ園を集約し、地区全体で整備を進めています。クリの6次産業化を目指し、昨年には加工設備を導入。今年はクリの販路拡大やPRを目的に、市と共同で収穫体験のモニターツアーを開催しました。
体験会には、本市の物産展を毎年開催している福岡市の農産物直売所従業員約20人が参加しました。地面に落ちたイガグリをトングで挟み、「楽しい」「初めて拾った」などと話す参加者たち。学生も協力した初めての収穫体験は大成功を収めました。
収穫後には、選別所や今年から販売を始める冷凍むきグリについて説明。生産者と農産物販売者の交流の機会をつくり、直接取引することでさらなる収益向上を目指しています。
今後も収穫体験を続け、高齢化する農家の負担軽減にもつなげていく予定です。
◇一緒に新しい発見をしたい
「若者たちが交流を通じて道を切り開いていく姿を見て、『自分たちも頑張ろう』と勇気をもらった」。渡辺さんは今までの活動を振り返ります。「よそものが集落に入って来ることに抵抗のある人もいたけど、交流を続けてきたことでみんなも外部の人と接することに慣れてきたよ」。認知度向上や新たな販路拡大を目指し試行錯誤は続きます。
「集落の中には、学生と関わることで行動が変わった人もいる。交流を続けることでおれたちの課題も見えてきた。これからも一緒に新しい発見を見つけていきたいね」
◇学生たちから元気をもらってます
菊池佐野 松本美佐子(まつもとみさこ)さん 中丸芳子(なかまるよしこ)さん
学生が佐野に来たときに、料理を作ってもてなしたり、郷土料理の作り方を教えたりしとります。料理を作ることはあっても、人に教えることは少なくなったから、こういう機会はありがたいね。
クリご飯やだご汁などは、私たちにとっては食べ慣れた料理だけど、いつも「おいしい」「懐かしい気がする」と言って喜んで食べてくれるから、うれしくて作りがいがあるよ。
学生は、私たちが考えもしなかったことを思い付く。話をしているとなんだか私たちも若返った気がするよ。これからも田舎の味を教えてあげたかね。
◇地域に笑い声が増えました
菊池佐野 前田隆義(まえだたかよし)さん
学生が来てから、地域に笑い声が増えた気がするね。いつもは家と畑の往復だけで、人と会わずにあいさつすることがない日もあるけど、大学生が来るとにぎやかになるよ。
若い人と話をするのが楽しいから、地域の行事に参加する人も増えたし、そのおかげで地域がまとまるようになったね。
クラウドファンディングをしたいと提案してきた時も本当にうれしかった。佐野での新たな挑戦を楽しみにしながら、これからも一緒に活動をしたいと思ってるよ。
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