■Scene5 専門家が見た菊池佐野地区
外部との交流が地域を持続するヒントに―
菊池佐野区と熊大生の交流は、地域にどのような変化をもたらしたのでしょうか。本市の地域研究を行っている熊本県立大学の柴田祐(しばたゆう)教授に話を聞きました。
プロフィール:熊本県立大学環境共生学部教授 柴田 祐(しばたゆう)さん
大阪大学工学部卒、大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(工学)。平成29年より現職。専門は地域計画、農村計画、景観計画。県内の農山漁村地域における地域資源を生かした地域づくりなどの調査、研究を進めている。
◇両者の出会いは正に“ご縁”
菊池佐野区と学生との活動の素晴らしさは7年以上にわたり交流が続いていることです。地域が学生を受け入れ続けるのは簡単なことではありません。単純な労働力ではありませんし、準備する手間もかかります。
ここ数年はコロナ禍の影響もありました。そんな中でもここまで長期間つながりを持ち続けられたのは信頼関係があったからだと思います。両者の出会いは正に“ご縁”としかいいようがありません。
今回のケースでは、両者に良い面がありました。地域は若者と関わることで刺激をもらい、新しい取り組みを始めています。学生は世の中を知る学びやアイデアを実現し、成功体験を積み重ねる挑戦の場になりました。お互いに実りのある交流です。
◇地域に関心を持つきっかけに
これまでの交流の成果で、地域活動が活発になりました。しかし、人口減少や少子高齢化による将来への危機感は消えていません。
期待するのは地域を出ている子どもたちの世代です。現在、菊池佐野区には毎月学生が来て、マスコミにも取り上げられています。これは子どもたち世代にとってもうれしいことではないでしょうか。
例えば、クラウドファンディングの支援やイベントの日だけ帰省するなど、関わり方はたくさんあります。地域の次世代を担う人たちが、地元に関心を持つきっかけになるといいですね。
◇今の暮らしを見つめ直す
今後、日本の中山間地の人口が減ることは避けられません。大切なのは地域が持続していくこと。学生ではなくても、企業や行政など外部の人と関わることはできます。交流が進むことで、他の地域でも自分たちの暮らしを見直すことにつながるよう期待しています。
菊池佐野区と学生との交流は、お互いが試行錯誤を繰り返しながら続いてきました。活動が継続していくことで、さらなる変化が出てくることでしょう。地域の内外から生まれた連鎖反応が、どのように展開していくのか楽しみです。
■Scene6 エピローグ
◇「できること」はたくさんある
「あと何年この活動が続くか分からない。でも学生たちと話していると何とかなるんじゃないかと思えてくるんよ」。未来を見据え、前を向く渡辺勝則さん。今年、大学を卒業した東颯汰さんも「これからも佐野に関わっていきたい」と地域への思いを語ります。
これまでの活動が評価され、昨年2月に「つなぐ棚田遺産」(農林水産省実施)に認定された菊池佐野区。今や全国から注目される中山間地の一つです。
「学生に喜んでほしい」。「佐野の皆さんの笑顔が見たい」。互いを思いやる地域と学生。築き上げてきた信頼関係が、世代を超えてつながる強い絆があるからこそ、今でも交流が続いています。
少子高齢化が進む中、菊池佐野区でも人口減少は避けられません。それでも一歩踏み出すことで「できること」はたくさんある。今回の事例は、地域の未来を考えるヒントになるのではないでしょうか。
楽しみながら、柔軟に変化しながら。変わり続ける菊池佐野区と熊大生の挑戦は続きます。
問い合わせ先:市長公室
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