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人権・同和教育シリーズ(213)

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熊本県菊池市

■地域人権教育指導員 吉山義信(よしやまよしのぶ)先生を偲んで
地域人権教育指導員 宮崎篤(みやざきあつし)

◇かけがえのない先達
昨年7月、地域人権教育指導員の吉山先生が亡くなりました。先生は私たち教員の先達としてかけがえのない人でした。その思い出をつづり、先生への哀悼の思いを表したいと思います。
30数年前、私が赴任した学校に先生はおられました。誰にでも声を掛けて気軽に相談に乗ってくださり、不安だらけの新任教員にとって頼れる先輩でした。先生を囲んで職員室で歓談し、笑い声が絶えませんでした。
特に顔全体がクシャッとなる笑顔が印象的で、まさに破顔一笑、私たちはその笑顔にとても励まされました。

◇吉山先生が伝えたかったこと
しかし、教育の具体的な実践や子どもたちの話になると、先生の目は鋭くなり、言葉に熱がこもりました。
先生は「あた、そん子んことばどんだけ知っとるね?」「その子が今まで乗り越えてきたものや小さな体に込められた親や大人たちの思いをどれだけ知っとるね?」「気になるなら家に行って親と語り、その子の背景を知り、その子に響く授業づくりや集団づくりをしなさい」とよく言われていました。
実際、先生の動きには目覚ましいものがあり、常に動き回って、椅子の温まる暇がありませんでした。そして、下を向きがちだった子が顔を上げ、前向きになっていきました。先生の周りには、そんな子どもたちの笑顔があふれていました。
葬儀にはさまざまな世代の教え子たちがやってきました。焼香を待つ長い列は、先生の一生を物語るものでした。

◇親たちの思い、願い
先生の原点は、部落差別と闘う親や子どもたちとの出会いでした。世の不合理への怒りです。
「親を恨み、ふるさとを恨んで、このふるさとを出ていくような子にだけは、命を与えた親として、育てるわけにはいかんとです」「どんな親でも、こん部落差別というとだけは、どがんもできん。逃げても逃げても追いかけてくる。だけん、子どもを強うせんと…」これはある研修会で語られた親たちの言葉です。
嬉しいはずの命の誕生が、同時に苦悩の始まりであるという不合理。子の命や育ちに対する血のにじむような親の思い、願い。先生は深い関わりの中で、それを我がものとしていかれたのでした。「部落差別は、決して許されん!」その思いで部落差別をはじめ、あらゆる差別をなくす学習会を組織し、学校や行政に働きかけられました。
その動きは少しずつ世の中を変えていきました。先生の後を継いで10カ月、人権未来都市宣言の発布やパートナーシップ制度の制定などに立ち会い、そのことを実感する日々です。
社会は間違いなく変わります。信念をもって先生の思いを受け継いでいきたいと思います。

問い合わせ先:人権啓発・男女共同参画推進課
【電話】0968-25-7209

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