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特集 みんなの楼門(2)

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熊本県阿蘇市

■みんなの楼門(3)
復旧の過程を伝える
復旧工事のようすを伝えた人たちもいました。

12月7日、楼門復旧工事の完了を祝う竣功祭が行われました。新聞やテレビなど多くの報道が楼門の前でカメラを構える中、少し離れたところでカメラを回す男性の姿がありました。ビデオグラファーの中島昌彦さんです。中島さんは、熊本地震で阿蘇神社が被災してから完成まで復旧工事のようすを動画で記録し、動画配信サイトで公開しています。「撮影するときは報道の人たちのようすも合わせて記録に残すようにしています」。そうすることで、その出来事がどれだけ注目を集めていたかも分かると言います。
中島さんは阿蘇市出身。東京でテレビのディレクターとして働いていました。平成28年4月、帰省してすぐに熊本地震に遭いました。地震直後の神社には、被害の状況を尋ねたりする電話が鳴りやまず、対応する神職も足りていないようすでした。4月24日、中島さんはSNSでの情報発信を神社に提案。前職でSNSを活用していた経験を生かし、被害の状況やどんな支援が必要なのかを発信しました。さらに、動画の撮影と公開も5月から始めました。当初は2週間で東京に戻る予定でしたが、阿蘇神社での情報発信を続けるうちに、今では阿蘇に事務所を構えるまでになりました。
中島さんは復旧工事にも密着し、ボランティアで記録を続けました。難工事に挑む職人たちの思いを知ってほしいとの思いからでした。「倒壊した状態から元の状態に戻すという日本でもあまりない工事。阿蘇のために頑張ってくれた人たちの顔を思い浮かべてほしい」。困難に挑む姿を記録し、その思いが伝わる動画を目指しました。
パソコンで動画の編集作業をする中島さんの足元には大きなHDD(記憶装置)があり、7年に渡って撮影された何千時間分の動画が保存されています。容量はなんと30TB以上。現在は、この膨大な量の素材を90分程度の動画に編集し、公開を目指しているそうです。中島さんの編集作業はまだ続きます。

○7年間通った楼門
市教育委員会の宮本利邦学芸員は、楼門の復旧工事のようすを同じ位置から撮影し続けました。その期間は平成28年11月1日から令和5年12月7日までの期間。楼門が素屋根で覆われていた期間以外はほぼ毎日撮影に訪れました。撮影した日数は合計で727日。「工事の過程を振り返ることができたらいいなと考えた」。長男が平成30年に生まれたこともあり、熊本地震を知らない世代が増えていることを感じた宮本学芸員。「年月が経つと地震のことも忘れ去られてしまう。動画を見て熊本地震に関心を持ってもらえたらうれしい」と話しました。727枚の写真をまとめた動画は市公式SNSで公開中。

■みんなの楼門(4)
みんなで灯したちょうちん
12月2日から17日にかけて開催された阿蘇復興ちょうちんまつり。阿蘇神社前公園に960個のちょうちんが並べられました。それぞれに企業や個人の名前が記されていました。ちょうちんに込められた思いを聞きました。

寒風が吹き、本格的な冬の訪れを感じさせる天気となった12月2日。神社前公園は寒さも忘れさせるほどの高揚感に包まれていました。「こっちのちょうちんが少しずれとるぞ」。高さ約10メートルのやぐらを見上げながら叫ぶ声が聞こえてきました。この日は阿蘇復興ちょうちん祭点灯式の日。実行委員会事務局のスタッフが最後の準備に追われていました。
祭りは犠牲者の鎮魂と復興への希望の灯りとしてちょうちんに光を灯すもので、阿蘇神社の復旧完了に合わせて企画されました。やぐらには祭りに協賛した個人名や会社名を記したちょうちん960個が並べられました。
準備が終わり、辺りも暗くなるといよいよ点灯の時間。合図に合わせて一斉に点灯したちょうちんが夜空を明るく彩りました。12月9日にはキッチンカーが来場。花火も打ち上げられました。17日にはバルーンを空に飛ばすイベントもあり、17日までの期間中に約1万3千人が来場。「想定の倍以上の人数。初めてのイベントで不安もあったが、多くの人に来ていただきありがたかった」と話す実行委員会委員長の山部雄作さん。「それだけ楼門の復興が地域の人に待ち望まれていたということでしょう」
山部さんら主催者がこだわったのは、市民自らが祭りに携わることでした。ちょうちんは全てスタッフと阿蘇中央高校生や地域のボランティアが取り付け、打上花火の翌日には早朝から田んぼの清掃も行いました。「祭りをみんなで一つ一つ作り上げながら、大変なこともいろいろな人と共有できたらうれしい」と話す山部さん。祭りの運営を通して仲間たちとの絆は固くなったと言います。今後はさらに多くの市民を巻き込みながら祭りを続け、シンボルである楼門を媒介とした阿蘇全体のつながりを強くしていきたいと考えています。

◆第2回 阿蘇ちょうちん祭開催決定
期間:4月6日(土)~4月16日(火)
点灯時間:日没~午後9時
会場:一の宮町中央駐車場「神社前公園」および周辺

○復興のあかり協賛追加募集
市民の皆さま、企業の皆さまと共に復興のあかりを灯しませんか?
1万円/1口

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