高森町教育委員会では、にわかの調査事業を実施し、令和5年度に高森のにわか調査報告書を刊行しました。広報たかもりに連載し、にわかの調査を通じて、ここが面白い、特筆すべき点を町民のみなさんに紹介します!
■第5回 風鎮祭のなかの仮装行列
元高森のにわか調査委員 吉留 徹
(元夏目漱石内坪井旧居館長)
仮装行列は、「通りもの」、「通し物」とも呼ばれ、「にわか」、「つくりもの」と並び、祭りの特徴を示す出し物の一つでありました。一般には祭りの場における山車や屋台などとともに神幸行列につき、三味線・太鼓の囃子に合わせ、歌ったり踊ったり、練り歩く集団を指します。異様な出で立ちの華やかな仮装と練り歩きあるいは踊りをともなっています。民俗学的には災厄をもたらす神霊(悪霊)を招き入れ、地域を巡り送り流す、風流行事のなかにみられます。
明治28年(1985)横町文書のなかに「旧十七日通し物壱つ十八日は雨天にて三丁共通し物不致候事」と「通し物」の名が見えますが、内容は不明です。
具体的内容がわかるのは、高森向上会が結成された大正15年(1926)年『九州日日新聞』に、横町分団は「安来節、木曽踊りなど妙技」、下町分団は「高森伊予守面影」、上町分団は「アインスタイン、賀川豊彦、田村博士(田村剛)、ナポレオン、九日特派員、伝書鳩、大西郷、乃木大将などの仮装人物四十有余名」と、踊りや演芸と歴史的に有名な人物、地域に関係する人物に扮装して練り歩く姿が描かれています。
昭和27年(1952)にはコンクールもあり、にわか同様、各向上会で凌ぎを削っていたことがわかります。また向上会が共同で一つのテーマで実施したこともあります。
昭和30年(1955)高森町合併時には、向上会以外にも役場の大名行列が出され、翌年にも「役場職員五十人の町発展史が圧倒的な人気で奇想天外な仮装」であり、歴史をテーマにした仮装は、高森風鎮祭における仮装行列の特徴の一つとなっていきます。
1960年代~70年代の高度経済成長期には、商工会による仮装行列が盛大に実施され、「戦後二十五年史」、「世界の民族衣装」等歴史や世界をテーマにしたものがみられます。平成期以降には「20世紀回顧」(風まる子ちゃん・ドラえもん等)や「高森映画祭」(ハリーポッター・SF映画のヒーロー他)などTVや映画の主人公をモチーフにしたものがみられるようになり、仮装行列は当時の流行や世相がよくわかり、歴史を映し出す鏡でもありました。
残念ながら、後継者不足等で仮装行列はおこなわれていません。しかしながら、「通しもの」、「造りもの」、「にわか」の三つが揃ったところにこそ、県下唯一の高森風鎮祭の特徴だと思います。その継承は非常に厳しいですが、祭りの花だった仮装行列の復活を期待してやみません。
参考・引用文献:熊本県阿蘇郡高森町教育委員会編『高森のにわか』(2024.3)
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