■向田町のシンボル「向田の火祭」
地震後でも、やる。これからも祭りを続け、復興につなげたい―
地震の影響で祭りやイベントが中止になる中で開催された「向田の火祭」。向田町の人々は地域を盛り上げ、復興の活力になると信じて祭りを行い、多くの観衆を魅了した。
ここでは祭りに関わった人たちにその思いを明かしてもらった。
▽若衆は全員「祭りがやりたい」熱い思いが周囲を動かした
能登島向田町 髙畑正伸町会長
当初は祭りの開催を反対していましたが、若衆の「祭りを存続させ、被災した地域を元気付けたい」という熱い思いに触れ、前向きな気持ちに変わりました。
平日の準備作業にも仕事を休んで出てきて、文句を言わずに準備を行う若衆の姿からも、「祭りをしたい」という強い気持ちが伝わりました。
当日は向田町の頑張っている姿を見せることができ、被害が大きかった地域にも元気を届けることができたと信じています。
▽感じたのは向田町の人たちの祭りを愛する心意気
金沢大学人間社会学域地域創造学類4年 西尾祐希さん
大学の研究で向田町の祭り文化に興味を持ち、去年の秋から向田町に通っています。町の人たちには、よそから来たのにまるで家族のように温かく迎え入れてもらえてうれしかったです。
町全体で祭りを盛り上げようとしていることには特に感動しました。これは自分の暮らす地域にはないことで、住民同士の団結を強く感じました。
私は正直「今年は無理だろう」と思っていたので、地震後の開催を決めたことにとても驚きました。同時に「祭りを絶やしてはいけない」という心意気が伝わり、町の人の祭りを愛する気持ちに胸を打たれました。
調査を通じて、祭りのことも町の人たちのことも大好きになりました。これからも祭りを続けるため、私も力になりたいです。
▽人と人をつなぐ祭り大変なときだからこそ祭りで活力を
向田壮年団 梅田耕輔団長
祭りが近づくと市外に出た人も地元に帰って準備を手伝い、普段は顔を合わせない近所の人ともお互いの近況を確認しながら作業を進めています。他の地域から祭りに興味を持って手伝いにきてくれる人もいます。祭りを止めてしまうのは楽だと思うけど、祭りが地域の結束を強め、新たなつながりを生んでくれていると思います。
地震で大変な状況下でも「祭りをしたい」と強く思ったのは、コロナ禍で祭りができなかったときに「町全体に元気がない」と感じたからです。祭りができない期間は自分自身の気持ちも下がり、改めて「俺って祭りが好きなんやなあ」と実感しました。きっと他の住民もそう感じていただろうし、こんなときだからこそ復興の活力にするために祭りをするべきだと思いました。
地震の被害が大きく、祭りをしたくてもできない地域が多くある中、祭りができることに感謝しながらこれからも祭りを続けていきたいです。
人口も世帯も少なくなる中で、祭りを通して確かに感じる地域の絆。周囲との協力が大きな活力になるということを向田町の人々は示してくれた。
市全体にこの活力が広がり、復興につながることを願っている。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>