■映画で知る人生、これからも共に
友人に映画館に行くかと尋ねると、「DVDで観て、ここ数年行ったことがない」との返事が多い。
映画を最初に観たのは昭和30年代。禁酒で建てた河合谷小学校の講堂(体育館)に移動式の映写機を設置、床にゴザを敷き、お姫様役の松島トモ子が出ていた時代劇で、悪者から姫を助けに主役が馬で駆けてくると、堂内から一斉に拍手や声援が飛び交い夢中になった。青春時代のデートスポットの定番は映画館。当時人気の恋愛物「卒業」(アメリカ・昭和43年公開)を観に行き、たまに彼女の肩が触れたり、面白がっているかが心配で内容はあまり覚えていなかった。
特に映画に興味を持つようになったのは、次のことが原点ではなかろうか。
平成11年6月の新聞「舞台」で映画史研究家・加賀市在住H氏の「街中の大衆文化」の記事に共感し、筆者宅を訪問。初対面にもかかわらず、氏はおびただしい数のポスター、スチール写真、プログラムなどに囲まれながら、切々と映画という一つの文化を通して「地域の活性化を図る原点」また、それらは個人から生まれ、大衆の中にあってこそ「価値がある」などと熱っぽく話され、聞き入った。
近頃の作品には、これまでの勧善懲悪のハッピーエンドではなく、佳境に入ってこれからかと身を乗り出す寸前でカット、「何でや」、「こう来たか」とニヤリとすることも。
現在、県内には商業施設にテナントとして入居する複合型で映画を複数本上映する大規模なものがほとんど。唯一、金沢市香林坊の客席90のミニシアターでは、ひと味違う世界の作品を上映。どちらかを選び、平成16年から週1回のペースで楽しんでいる。
昭和28年公開の映画「ライムライト」(アメリカ)で登場するチャップリンは、「人生に必要なものは、勇気と想像力、そして少しばかりのお金」と話している。
時代と共に価値観や娯楽も変わってきたが、映画の入場料は千円台、暗闇の中で2時間ほどスクリーンの中に飛び込み、出演者と動き回り、感動を自分のものにしては如何か。
▽金田信市(かねだしんいち)
津幡町横浜在住。平成25年より津幡地区民生児童委員。同26年に「金沢城・兼六園研究会」の会員。同27年から町内の小学校などで紙芝居「禁酒物語」を上演する「禁酒の学校を語り継ぐ会」、令和4年4月「つばたふるさと探偵団」のメンバーにも。
大の映画ファンで、毎年約50本を映画館で鑑賞する。
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