■支援者が加害者になる
「支援者が加害者になる」とはどんなことなのか、みなさんは想像がつくだろうか。
先日、ある話し合いのとき、「専門家である現場で虐待のようなことを垣間見た」と話された方がいた。子どもを預かる現場で、いまだに何十年前かのような保育。全国でニュースになっていることが身近で起こっている状況に一同が愕然とした。
何十年も前の話で申し訳ないが、私が子育て支援の現場に出て間もないころ、あるお母さんが相談されたことがまさに“それ”だった。町外の保育園に通っていた我が子が椅子に縛られて座らされている。暗い物置部屋に入れられる。嫌いなものを食べないとお昼寝(午睡)の時間も座らされている。暴言などなど…。なぜ、そのことが分かったのか尋ねると、子どもの保育園行き渋りから発覚したものだと分かった。さらに相談はそのお母さんにとどまらず、同じ保育園に通う何人かの母親からも同じ相談が相次いだ。
子育ての現場は子どもたちの安心安全の場であるはずなのに、それが恐怖の居場所になる現実。さらに“それ”は、お金をもらって働いている専門家の現場であるにもかかわらず、あってはならないことが起きている。さらに怖いのは、見て見ぬふりをする周囲の専門家の存在がいるということ。心当たりのある専門家は、よく考えてほしい。起こっている現状は“誰のため”の現状なのかということを。決して“大人の都合”で未来の子どもたちに影を落としてはいけない。そして大事なのは、子どもたちが守られない安心安全の場でないのならば、それは実は現場の専門家たちも守られない場なのかもしれないということ。何も言い出せない、見て見ぬふりをしなくては仕事ができない現場であるということ。子どもたちが恐怖の現場は、実は専門家の現場も恐怖の現場になっていることにもう気が付かなくてはいけない。そして子どもたちのためにどう動けばいいのか、専門家ならば考え、迷うのであれば相談してほしい。子どもたちの未来のために。
▽村中智恵(むらなかさとえ)
看護師として10年の勤務後、専業主婦となる。4人の子育て中に出会った母親たちから聞こえてくる苦しみは、まさに「家族の危機」が多く、水面下の現実を知る。
その後、母親たちを支援することにより、子どもの健全育成を図ることができるのではないかと考え、地域協働の子育てを実現させようと活動をはじめる。
現在、民生委員・児童委員として活躍している。
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