■大腸がんと大腸内視鏡検査について
内科(消化器内科)清水吉晃
近年、我が国における大腸がんは罹患数、死亡数ともに増加傾向にあります。がん統計によれば、令和4年は男性28,099人、女性24,989人が大腸がんで亡くなっており、部位別がん死亡数でみると、男性では肺がんに次いで2位、女性では1位の死因でした。
大腸がんの主な発生様式として、腺腫がん化説(まず腺腫性ポリープができ、そこに遺伝子変異が加わることでがんが発生する)とde novo発がん説(ポリープを経ずに最初からがんとして発生する)がありますが、前者がメインと考えられています。腺腫性ポリープはがんになる潜在性を有するため治療適応とされていますが、ほとんどの病変は内視鏡で切除が可能です。米国の研究で、腺腫性ポリープの内視鏡的切除により大腸がんの罹患率は76~90%減少し、死亡率は53%減少したと報告され、大きな抑制効果が示されました。
この結果を踏まえると、大腸がんの発生や死亡を減らしていくために、我々内視鏡医が質の高い大腸内視鏡検査を行い、見落としなく腺腫を発見、治療することが大切といえます。「大腸内視鏡検査の質」に関する重要なひとつの指標として、腺腫発見率(adenomadetection rate…ADR)があります。全大腸内視鏡検査の中で腺腫が発見された患者さんの割合のことで、例えば10人の患者さんのうち2人の患者さんで腺腫を発見すれば、ADRは20%になります。ADRが上昇すると大腸内視鏡検査後に発生する大腸がんの発症・死亡リスクともに有意に低下することが知られており、ADRが1%上昇すると、その後の大腸がん確率が3%低下すると報告されています。一般的にADR25%以上が検査医に求められる資質とされています。
当院において令和4年4月1日~令和6年8月31日の期間に行った全大腸内視鏡検査は913例で、そのうち447例(49%)で腺腫や早期がんに対する内視鏡的ポリープ切除を行いました。実際には腺腫が発見されても治療しないケースもあるため、ADRは50%以上あり、少なくとも2人に1人は腺腫を発見できていることになります。前述の指標を踏まえると、十分に質の高い検査を提供できているのではないかと考えています。
当院では、消化器内視鏡専門医2人体制で、苦痛の少ない大腸内視鏡検査を心がけています。がん検診で便潜血陽性の場合や、腹痛・便通異常・排便時出血などの何らかの症状を有する場合には、ぜひ当院での大腸内視鏡検査をご検討ください。
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