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まちかど a street corner(241)

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石川県津幡町

■こころの傷
先日、被災した方から連絡が来た。家を壊す前に物の整理をしたいから来てほしいというものだった。発災から3か月。道路はいまだに通行止めで回り道をしながら町に入っていく。隆起や亀裂。車で潜り抜けながら着いた家は異様な形で変形し、玄関までの道のりがまるで山を上り下りするように隆起しひび割れている。何とか家の中に入ると、当時のままの状態でコタツが盛り上がって天井が近い。歩くには傾斜がひどく気持ち悪くなる。この中で住人はさぞ怖かっただろうと思い巡らす。
「こころの傷」とは心的外傷とかトラウマというが、3か月たっても癒されていない。「地震が来たらね、ここ(窓)からお靴はいて逃げるんだよ」と、3歳児が遊びながら毎日お話ししてくれる。消えない体験。特に自分の気持ちを言葉で表現できない子どもたちは、何らかのサイン(おびえる、赤ちゃん返り、フラッシュバックなど)が見え隠れする。だけど大変な状況時、それは見落とされやすく、「こころの傷」は深くなっていく…。こんなとき、大人としてできる支援は何なんだろうと、こころが痛くなった。
日本小児科医会が発行した「もしものときに…子どもの心のケアのために」という冊子がある。そこに幼児期、小学生、中・高校生、大人のセルフケアまで書いてある。また、「被災地の避難所等で生活をする赤ちゃんのためのQ&A」が日本新生児成育医学会災害対策委員会から出ている。アレルギー対策もある。発災後サポートに入っているドクターたちが参考にしてほしいと伝えている。
医療連携で救われた命もたくさんある。お薬手帳を持っていれば薬がなくても対応できるから普段から持ち歩いてほしいことも分かった。また、我慢しすぎる子どもたち、大人が吐露できる場や寄り添うボランティアが必要なのに、受け入れができない現場の難しい現状も分かった。今回の災害を通して見えてきたものがアンケートなどで集約され、後世の参考になるように今動いている。私たちが今できることは風化させず、何が必要か現状把握しながらできることをしていきたいと思っている。災害云々だけでなく、誰もが「こころの傷」が深くなる前に「助けて」と言える世界を目指して。

▽村中智恵(むらなかさとえ)
看護師として10年の勤務後、専業主婦となる。4人の子育て中に出会った母親たちから聞こえてくる苦しみは、まさに「家族の危機」が多く、水面下の現実を知る。
その後、母親たちを支援することにより、子どもの健全育成を図ることができるのではないかと考え、地域協働の子育てを実現させようと活動を始める。

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