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まちかど a street corner(244)

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石川県津幡町

■こころの回復
子育ては当たり前に大変だなといつも思う。それは時代が変わっても基本は変わらず、保護者の負担は大きい。しかも、理想と現実の狭間で垣間見るものは、親自身の幼少期に受けてきた養育。幼少期甘えられた人は自立するといわれている。甘やかされたではなく。自己肯定感が育まれるのもそこが大きく関係していると、私の大好きな精神科医は話されている。
先日、そのドクターが子どものこころの回復のプロセスについて一定のパターンがあると、講演会で話してくれた。(無表情→行動化・身体化→甘えと怒り→言語化)そのお話を伺い、ある相談ケースを思い出した。20年前になるが、隣りの子どもさんが気になるのでどうしたらよいか聞かれたことがあった。小さい頃は無邪気で元気だった子が、保育園に入る頃にはニコリともしなくなり、両親の喧嘩が絶えず、時には母の顔にあざが見え隠れすることもあったとのこと。その子は時々保育園の行き渋りがあり、小学校では学級崩壊に近いことがあったと聞いた。当時は今の津幡町にある地区のネットワークはなく、まずは親やその周辺がそれ以上ご自身だけで何もかも背負うことを軽減できるようにファミリー・サポート・センターの利用や相談の常時対応、インフォーマル支援を心掛けた。久しぶりにその方にお会いし、隣りの子どもさんがどうなったのか伺うと、非行に走るなどの経過を経て、先日子ども食堂でお子さんを連れたその子と話すことができたと。小さい時にずっと母や自分が殴られてきたことを恩師に話してから自分を責めていた人生が変化し、今幸せに暮らしているとのことだった。
このケースはハッピーのように見えるが、自己肯定感が低い大人は多い。子どものこころの回復は大人のこころの回復でもある。言語化して当時の傷を話せる人がいるかどうか。最後まで見放さず聴いてくれる人がいるかどうかが、これからの人生のカギになると考える。それが専門家でもおばちゃんでも他人でもいいのだ。すべての人がその人らしく暮らせるためには、そんな人の存在が必要だと私は思う。そして津幡町にはそんな方々がたくさんおいでることを私は誇りに思っている。

▽村中智恵(むらなかさとえ)
看護師として10年の勤務後、専業主婦となる。4人の子育て中に出会った母親たちから聞こえてくる苦しみは、まさに「家族の危機」が多く、水面下の現実を知る。
その後、母親たちを支援することにより、子どもの健全育成を図ることができるのではないかと考え、地域協働の子育てを実現させようと活動を始める。
現在、民生委員・児童委員として活躍している。

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