11月2日、第10回日本美術展覧会(日展)の各賞が発表され、洋画部門で西房浩二さん(東任田町)が最高賞の内閣総理大臣表彰を受賞されました。能美市からの最高賞受賞は昨年の山岸大成さん(寺井町)に引き続き2年連続です。また工芸美術部門で武腰一憲さん(寺井町)が都知事賞を受賞されました。
巡回展は来年6月1日から23日まで、石川県立美術館(金沢市)で開催されます。
◆内閣総理大臣賞
西房 浩二さん(Koji Nishifusa)
▽約10年ぶりの静物画
西房さんは平成4年から平成23年までは静物画に、平成24年からは主にヨーロッパを舞台とした風景画に取り組んできました。風景画の作品を描く際には、いつも約10日間ほどヨーロッパへ取材に行き、気に入った題材の場所でスケッチや写真撮影などをします。しかし、新型コロナウイルスの影響で取材に行くことができなくなったことから、約10年ぶりに初心に返り、静物画を制作しました。
▽受賞作品「Smorzando(スモルツァンド)」
受賞作品には瓶や壺、果物などが載ったテーブルに、左から光が差す様子が描かれています。作品名の「Smorzando」とは音楽用語で「段々静まって」という意味で、その光が左から右へ行くにつれ、段々と暗くなっている様子から名付けました。西房さんは半年間、題材の様子を観察しながら、季節や一日の時間によって異なるさまざまな光を含んだ作品になれば良いと思い描かれました。
受賞に際し「尊敬する山岸大成さんや能島浜江(のうじまはまえ)さんと同じ賞を頂き大変うれしいです。近年、県内でも洋画や日本画の才能がある人が段々と出てきているので、一緒に切磋琢磨して成長していきたいと思います」と述べられました。
◆都知事賞
武腰 一憲さん(Kazunori Takegoshi)
▽九谷「サマルカンドブルー」
武腰さんは平成7年、39歳のときにシルクロードの東西交易の中心地、ウズベキスタン共和国を訪れました。旅の途中、古都サマルカンドで、武腰さんは真っ青な空と青いタイルの建物、鮮やかな色使いの民族衣装をまとった古老に目が留まります。かねてから中央アジアに惹かれていた感性に導かれ、武腰さんはこれを九谷で再現しようと青色を追求し、古九谷とは異なる作風として、九谷「サマルカンドブルー」を創設します。そして次々と独自の作品を生み出しました。
▽受賞作品「月の器・想日」
受賞作品は「月の器・想日」と名付けた花器で、まさにサマルカンドの青い夜と、大きく煌びやかに輝く月、その下で物思いにふける古老を表現した重厚な仕上がりとなっています。また月と筋雲は、大きな円盤の蓋で表現されています。
受賞に際し「日展では久しぶりの受賞でうれしく感じるとともに、次の励みになります。今回の作品からまた新たな構想が浮かんでいるので、次なる目標を掲げ、緊張感を持って取り組んでいきたいです」と述べられました。
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