■今月のイッピン!「九谷庄三(しょうざ)色絵おしどり図(ず)深鉢(ふかばち)」
九谷庄三は江戸時代後期の文化13年(1816)に、寺井村(現・能美市寺井町)の茶屋を兼業していた農家に生まれました。幼名は庄七(しょうしち)といい、11歳の時に若杉窯(わかすぎがま)の見習工として従事しました。この窯で、色絵九谷の名工で師の粟生屋源右衛門(あおやげんえもん)や赤絵勇次郎らから陶技の影響を受け、18歳になると山代の宮本屋窯で赤絵細描(さいびょう)の技法を1年半学びました。色絵と赤絵の技法を習得した庄三は、その後、師が関わっていた小野窯(おのがま)に招かれ、その技量を発揮しました。天保12年(1841)に寺井へ帰り、工房を開き独立しました。画風は色絵に赤絵、京焼の永楽和全(えいらくわぜん)が九谷に伝えた金襴手(きんらんて)と、さらに洋絵具の中間色をも加えた豪華絢爛(ごうかけんらん)な「彩色(さいしょく)金襴手」の様式を確立しました。
この作品の見込み部分には、題材となっているおしどりが色鮮やかに描かれ、和洋の絵具を使い分けることにより自然なグラデーションが表現されています。口縁には赤絵具で細密に格子文や菱文が組み合わさった襷(たすき)文と、赤地に金の卍(まんじ)模様などで装飾された金襴手がみてとれます。庄三の色絵、赤絵、金襴手の技量が遺憾なく発揮されたイッピン!です。(文・学芸員宮山)
九谷庄三 色絵おしどり図深鉢
サイズ:口径19.5/底径9.5/高12.0cm
作者:九谷庄三
生没年:文化13(1816)~明治16(1883)年
所蔵:|五彩館|
◆INFO
▽「第9回九谷ぬり絵コンテスト展覧会」
会場:五彩館 ロビーギャラリー・紫の間
期間:~1月13日(月・祝)
▽「能美市九谷焼瑞宝単光章展」
会場:五彩館 紫の間
期間:1月15日(水)~3月9日(日)
▽コレクション展(4)「名工歴代展ー近現代九谷の名家の系譜ー」
会場:五彩館 緑の間
期間:~1月26日(日)
▽「第31回日本工芸会石川支部陶芸部展」
会場:五彩館 緑の間
期間:1月28日(火)~3月16日(日) ※最終日は16時まで
※年末年始(12月29日(日)~1月3日(金))は休館
情報発信元:KAM能美市九谷焼美術館|五彩館|
入館料:一般430円・75歳以上320円・高校生以下無料
※浅蔵五十吉記念館もあわせて入館できます。
問い合わせ:【電話】58-6100【FAX】58-6086 ※月曜休館
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