文字サイズ
自治体の皆さまへ

【特集】厚木の観光地 この夏、七沢へ(1)

4/20

神奈川県厚木市

東丹沢の麓、自然・温泉・食文化がそろう七沢。観光に関わる人の思いを通じて、魅力を見つめ直します。

愛TV(市広報番組あつぎ愛テレビ):8/1~

■人と自然が生む七沢の酒
黄金井酒造
土壁に囲われた蔵は、夏でもひんやりとした空気に包まれ、ほんのりと酒の香りが立ち込めています。黄金井酒造の杜氏・飯塚栄治さん(49)は冬に日本酒を仕込んだタンク一つ一つに目を配り、異変がないか点検して回ります。味や品質を保つために、欠かせない作業です。「酒造りは、こうじ菌や温度など見えないものを扱う仕事」と真っ直ぐな表情で話します。

▽東丹沢の名水と越後杜氏
黄金井酒造は1818年創業の、長い歴史を持つ市内唯一の造り酒屋です。創業当初から敷地内に井戸を掘り、東丹沢の伏流水をくみ上げて酒造りに生かしてきました。八代目当主の黄金井康巳さん(70)は「水と米、そして人が酒の味わいを生み出す。ずっとそれを大切にしている」と強いまなざしで語ります。
黄金井酒造では26年前まで、9月から8カ月ほど、酒造りが盛んな新潟県から招いた杜氏(越後杜氏)が、日本酒を仕込んでいました。杜氏は、蔵元と共に酒造りの計画を立て、仕込みを指揮する最高責任者です。しかし、高齢になり長くは続けていけないと越後杜氏から申し出があり、自社で杜氏を育てるため希望者を募りました。その時に応募してきた一人が飯塚さんです。
飯塚さんは、越後杜氏から5年間、酒造りの基本を学びました。初めて社員だけで仕込みを任された年、試行錯誤しながら造った日本酒は、全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。「越後杜氏に『もう大丈夫』と言われていたけれど、本当にできるのか不安だった。結果を知ってうれしかったし、自分たちでもやっていけるという自信になった」と振り返ります。
「自分の造りたい酒に合わせて、もととなる麹を作りなさい」。越後杜氏の教えは、今も飯塚さんの中に生きています。

▽地域とのつながりを大切に
自社に杜氏がいることで、黄金井酒造では年間を通して酒造りができるようになりました。ビールや焼酎、クラフトジン、本みりんなど、時代に合わせて種類を増やし、今では8種類の酒類製造免許を持っています。その技術は、地域振興にも生かされています。
七沢観光協会の会長も務める黄金井さんは、いつも地域のことを考え、つながりを大切にしています。地元の人たちから農産物が持ち込まれ、酒製造を依頼されることもあります。これまで、鳥獣被害防止のために育てたカボスを使った酒や地元で採れたサツマイモの芋焼酎などを製品化してきました。黄金井さんは「難しい原料を持ち込んでも、越後杜氏の教えと多くの種類の酒を手掛けてきた経験で形にしてくれる」と、飯塚さんたちに信頼を寄せています。
飯塚さんは働き始めてずっと、市外から黄金井酒造に通っています。「小野橋を渡って玉川沿いの道に入ると急に景色が変わる。落ち着いた雰囲気が好きで、その印象はずっと変わらない」。黄金井酒造では、地元を愛する人たちと自然の恵みが混ざり合い、魅力的な酒が生まれ続けています。

■思いがつなぐ温泉郷
七沢温泉 七扇(ななおうぎ)(旧盛楽苑)
小鳥のさえずりが聞こえる朝の浴室。丹沢の森を抜けてきた風が、湯の上を静かに流れていきます。「七沢を訪れる方の多くは、自然を楽しみにされている」。七沢温泉にある旅館・七扇。佐藤友紀さん(26・鳶尾)は、客室の清掃や受付の準備をしながら、お客さんの到着を待ちます。

▽自然の恵みと新たな視点
厚木の奥座敷・七沢温泉は、江戸時代から湯治場として親しまれてきました。現在6軒が、美肌の湯と言われる泉質を生かし、温泉宿を営んでいます。佐藤さんが勤める七扇もその一つ。食事や温泉を楽しみに多くのリピーターが訪れます。
佐藤さんも、学生時代にアルバイトをしていた時の楽しさが忘れられず、半年前に横浜での営業職を離れて戻って来ました。「都会と違い、生活の中に緑が溶け込んでいるのが七沢の魅力。新たな発想を加え、もっと魅力的な場所にしたい」と話します。社長の荻山隆伸さん(42・七沢)は「若い人のアイデアは魅力が詰まっている」と迎えました。2人のアイデアで生まれたのが旅館内のバーです。佐藤さんはバーで客と話しながら、七沢の食材を楽しめる飲食店や自然を感じられるスポットを紹介しています。

▽魅力が集う観光地に
「一つの旅館だけでは、有名な観光地には劣ってしまう。みんなで力を合わせ魅力を高めたい」。荻山さんはこうした思いを持ち、地域とのつながりを大切にしています。3年前には、旅館と黄金井酒造、飲食店などと自然の中で食事を楽しめるイベント「森のよふかし」を開催。地元の食材を使った料理を招待客20人に振る舞いました。「コロナで立ち止まっていたけれど、また企画したい」と力を込める荻山さん。従業員たちも「地元の方と交流できるイベントはワクワクする」と話します。
古くから、多くの人を引き付ける七沢温泉。癒やしと安らぎを与えてくれる湯治場は、多くの人の思いでつながれています。

問合せ:観光振興課
【電話】225-2820

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU