博物館の学芸員が、あれこれを語り倒すコーナー。
■映画「鰯雲(いわしぐも)」は社会現象だった⁉
大塚 真由美
戦後、実生活で「家」から「人」へという価値観の変化が現れ始めた昭和30年代、人々の心も大きく変わり始めます。戦後の代表作『鰯雲』(1957年)は、まさしくそうした厚木とその周辺を舞台に、農地改革、家制度の崩壊、均分相続、戦争未亡人など、当時の世相を見事に切り取った話題作でした。作品は人気を博し、当時珍しかったカラーで映画化。市内でも撮影され、その一つが長谷地区でした。
「顔にクリームを塗る暇があれば草の1本も抜け」と言われ、労働力でしかなかった農家の嫁たち。彼女たちの間で生活改善運動が盛んになり、意思を持って自分の言葉で語ろうとし始めたのもこの頃です。長谷地区の婦人会では、映画の登場人物の生き方を、自分たちと比べ、客観的に見つめるアンケートを実施しました。人々の息遣いが感じられる資料です。
映画「鰯雲」(東宝、成瀬巳喜男監督)を9月2日上映。
問合せ:あつぎ郷土博物館
【電話】225-2515
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