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【特集】地域包括ケア社会を目指して つながりはすぐそばに(1)

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神奈川県厚木市

住み慣れた地域で人生の最期まで元気に暮らしたい―。その思いを分かち合うことで心身を健康に保ち、人生を豊かにする人たちがいます。市内にはスポーツ、茶話会などで地域の人が交流できる「通いの場」があります。特集では船子にある「通いの場」で出会い、つながりながら、自分らしく生活する人たちの姿を追いました。

Q.今住む地域に今後も住み続けたいですか

出典:市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画改定のためのアンケート調査結果報告書

「おはよう。今日もいい天気だね」「久しぶり、元気にしてたかい」。柔らかい朝日が差し込む公園から、明るい音楽と話し声が聞こえてきます。船子にあるマンション近くの小さな公園。そこで月2回、住民が集まってラジオ体操をし、穏やかな時間を過ごしています。「今日も来てくれてありがとう。皆さんの顔が見られてうれしい」。発起人の山田善治さん(75・船子)は集まった住民たちの姿に笑顔を見せます。

■地域のためにできること
ラジオ体操はマンションで暮らす人たちの交流のため、2021年に市内約300カ所にある通いの場の一つとして始まりました。42歳の時、このマンションに家族で越して来た山田さん。「当時は百貨店の販売員として働いていて仕事が忙しく、家には寝るために帰るだけだった。近所の人たちも見かけるだけで交流はほとんどなかった」と振り返ります。
そんな山田さんが地域に根差した活動に関心を持ったのは17年前。自治会長になり、周りの会長たちが地域のために汗を流す姿を見たことがきっかけでした。「先輩の自治会長たちの姿を見て、刺激を受けた。自分もできることを頑張ってみようと思った」。初めて企画した公民館の運動会。参加者たちの喜ぶ顔を目の当たりにして「もっと喜んでもらうために何かできないか」とさらに地域への思いが強くなりました。その時思い浮かんだのがマンションの住民たちの姿です。「昔、すてきだなと見ていた人たちの元気がなくなるのが悲しかった。何かできないかと思った」と自分にできることを考え始めました。

■輪を広げるために
住民たちのやりたいことを知るために、まずは家族以外の誰かと話せる場を作ることが大切だと思った山田さん。「一度しかない人生だから、家にこもっているのではなく、外に出て楽しんでほしい」と月数回、気軽に体を動かせるラジオ体操を開くことを思いつきます。そんな時、市が始めた通いの場の交付金を知りました。「失敗したらどうしようという不安はなかった。とりあえずチャレンジして、参加してくれる人が少なければ改善すればいい。何かやらなければ始まらない」と動き出します。マンションの掲示板に自作のポスターを貼って参加者を募り、初回には約20人の住民が集まりました。「体操がきっかけで人とのつながりが増えてうれしい」と山田さんは笑顔を見せます。
活動を通じて目指すのは、参加者同士がつながり支え合うことです。「体操で出会った人、月1回発行している新聞にある私の電話番号。何でもいい。誰かと話せる関係性をここで築いてほしい。つながっていれば、何かあったときに助け合える」と山田さんは力を込めます。

■出会いはつながりに
活動を始めて約2年。交流の輪は会を通じて知り合った住民同士に広がっています。初回からラジオ体操に参加している清原貴美子さん(71・船子)もその一人。清原さんは会が始まる以前、近所の住民との交流がほとんどありませんでした。変化があったのは、50代で病気を患い家に引きこもりがちになった時。「それまでは働いていたこともあり、近所の住民との交流を煩わしく感じていた。病気になって初めて、家族以外に話せる人、地域とのつながりの必要性を肌で感じた」と話します。
誰かと関われる場を探していた清原さんの目に入ったのがラジオ体操のチラシでした。顔見知りだった夫婦も参加することを知り、一歩踏み出してみることにしました。「あの日、青空の下で体操をした時の解放感は今でも覚えている。勇気を出してよかった」と目を細めます。会への参加を重ねるごとに誰かと話し、つながる楽しさを知った清原さん。徐々に交友関係を広めていきました。今では自身の経験から、元気がなさそうな人がいれば、「どうしたの」「何かあった」と声をかけることを心掛け、時間が合えば誰かの家に集まって、日常の何気ない出来事や悩みを話すようにしています。
「あの日、山田さんが会を開こうと思わなかったら、今私はこうしていない。自分一人ができることには限りがあるけれど、その中で少しでもつながり、支え合える関係が広まっていくといいな」と清原さんは話します。

■できることをできる範囲で
「会への参加者が少しずつ減っている」と最近の悩みを打ち明ける山田さん。しかしその目は曇っていません。「どうすればみんなが外に出て笑顔になってくれるか、周りの意見を聞きながら考えていく。自分がやりがいを感じるこの活動を、楽しく続けたい」。そう話す山田さんはいつもの公園に向かいます。「山田さん、おはよう。今日も体操日和だね」「この間は誘ってくれてありがとう。話ができてすっきりしたよ」。市内の小さな公園から今日も緩やかなつながりの輪が広がり続けています。

問合せ:地域包括ケア推進課
【電話】225–2224

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