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【特集】ロック×福祉で幸せに 何があってもだいじょうぶ

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神奈川県厚木市

市内の福祉事業所を拠点に活動するロックンロールバンド・サルサガムテープ。今年で結成30周年を迎えたバンドの日常に目をやると、音楽の力でみんなの存在を肯定し、全力で楽しみながら地域とつながりを深める姿がありました。

プロフィル:教育テレビ番組「おかあさんといっしょ」5代目うたのおにいさん・かしわ哲さんが知的障がいがあるメンバーたちと結成したバンド。1994年に秦野市の施設でスタートし、ライブやCD発売など精力的に活動。2011年に厚木に拠点を移し、設立した障害福祉サービス事業所の活動の一つとして、イベントなどで全国のステージに立つ

木々が色づく頃、本厚木駅からほど近いすずらん通り沿いの一室から、ギターや太鼓の楽しげな音色が聞こえてきます。エレキギターを手に歌うのはかしわ哲さん。市内で障害福祉サービス事業所・NPO法人ハイテンションを運営しています。「ロックンロールと福祉をつなげたのは日本で初めてだと思う」。法人では生活介護や放課後等デイサービスなどを実施しながら、音楽活動や絵画、工作などの制作に取り組んでいます。

◆約束事は「指導しない」
演奏や絵画の制作などで大切にしているのは「指導しない」こと。「その人が空はピンクと言えばピンクでいい。一人一人に歩んできた人生やドラマがある」と話すかしわさん。中にはバンド練習に参加するも3年間、叩かなかったメンバーもいました。それでもただ見守り続け「やりたくなったらやればいい」と、意思を尊重してきました。
現在、バンドのメンバーは20〜70歳代の約20人。事業所を利用する加川正人さん(44・岡田)もメンバーの一人です。加川さんはグループホームに住みながら、週に5日、バスで通っています。「絵を描いたり、料理したり、みんなでできるのがうれしい」と、スタッフや仲間たちとの活動を楽しんでいます。昔から音楽が好きで、「事業所でバンドができると思わなかった」とドラム演奏の経験を生かしてバンドを支えています。
スタッフの戸田淳介さん(40)は、介助やスケジュール管理など、事業所の責任者を務めながら、バンドではボーカルを担っています。法人の設立後すぐにアルバイトとして関わり始めた戸田さん。「障がいのある人と関わったことも、福祉の知識もなかったので不安だった。接してみると、人と人が関わるということ自体に違いはなく、それぞれが個性豊かな面白いメンバーで、障がい者とひとくくりにできる人はいないと思った」。働きながら資格を取り、福祉に関わる知識や技術を身に付けました。間近で演奏を見て楽しそうと思い、バンドにも参加。趣味でギター演奏など音楽に触れていた戸田さんは、「メンバーはパフォーマーとして高め合えるライバルのような存在。バンドはとにかくめちゃくちゃ楽しい」と話します。

◆そばにいるのが当たり前
「閉鎖的な事業所ではなく、誰でも関われるよう扉を開けていきたい」。年に1回、すずらん通りに3カ所ある事業所や通りを会場に、縁日やお絵描き、ステージなどを楽しめるイベントを開いています。「みんな大丈夫、何があっても大丈夫」という意味を込め「だいじょうブゥまつり」と名付けられたイベントは、今年で3回目を迎え、保護者だけでなく地域の人たちもたくさん訪れています。
事業所の隣でコーヒー店を営む百田哲郎さん(71・旭町)も、祭りに協力店として参加しています。コーヒーを飲みに来店するスタッフと会話を重ねるうち、福祉に関心を持っていった百田さん。「事業所を行き来したり、散歩したりする皆さんとスタッフのやりとりを見て、接し方などを知った」と言います。イベントへの参加だけでなく、利用者が作った事業所のたよりを受け取ったり、言葉を交わしたりと、「皆さんがすぐそばにいる日常は、私にとってごく自然なもの」と、ほほ笑みます。

◆楽しい空間を共にする
バンドのライブは本厚木駅前や文化会館、小学校など、市内をはじめ全国で実施しています。年間30回ほどステージに立ち、ゲストを招いたり、観客を巻き込んだりと、その空間をみんなで楽しんでいます。「一緒に何かを作り上げるのが大切。その活動の中心にあるのがロックンロール」。絵画や工作などのアートやだいじょうブゥまつりなど、音楽を中心に活動の輪を広げています。「30年間バンドが続いてきたのにはきっと意味がある。これからも長く続けたい」と力を込めるかしわさん。「包容力のあるまちであってほしい。いつか厚木でもロックフェスができたら」と笑顔を見せます。
「よし、始めようか」。かしわさんのギターの音を合図に、みんなが握りしめたスティックを勢いよく振り下ろします。全力で「生きる」を楽しむ人たちが奏でる音楽は、どんな垣根も乗り越えて、にぎやかに世界へと鳴り響いています。

2025年に文化会館でライブを開催予定です。詳細は今後の「ぶんか情報館」でお知らせします。

■障がい者相談支援センター
専門の相談員が、市内の障がいのある方や家族、地域の方からの相談を受け付けています。

相談時間:8時30分~17時15分(祝日・年末年始を除く)
電話相談も可

▽ささいな事も相談して
厚木障がい者相談支援センター
相談支援専門員
河嶋 明さん(52)
センターでは障がいに関する悩みを聞いたり、支援サービスを受けるための手続きをしたりと、一人一人に寄り添ったサポートをしています。相談しづらい気持ちや不安もあると思いますが、「話して良かった」と安心してもらえるよう、和やかな雰囲気づくりを心がけています。ささいなことや話がまとまっていなくても問題ありません。どんなことでもいいので、まずは話してほしいです。対面が難しい場合でも、メールや電話で相談ができるので、気軽にセンターを利用してください。

問合せ:障がい福祉課
【電話】225-2221

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