アルコール依存症は誰にでも起こりうる病気です。「自分は大丈夫」と思っていても、気づかぬうちに飲酒習慣が依存に変わることがあります。自分や大切な人を守るためにアルコール依存症を正しく理解し、適切な治療へとつなげることが重要です。
◆アルコール依存症の特徴
◇飲酒のコントロールができなくなる
体のアルコール分解能力を超える飲酒が続くと、脳の神経細胞が異常をきたし、飲む時間、場所、機会、量を自分でコントロールできなくなります。また、長期間断酒をしていても、一度でも飲むと、また元の状態に戻ってしまいます。
◇離脱症状が表れる
アルコールが切れてくると、手の震え、寝汗、不眠、吐き気などの症状が出ます。これらの症状はアルコールを摂取すると治まるため、脳がアルコールを要求する信号を体に送り、結果として飲酒してしまいます。
◇飲酒の問題を過小評価する
飲酒が原因で生じた問題を直視することは、心理的に大きな負担となります。それを避けるために飲酒を続けているうちに、飲酒の問題を認識できなくなります。
◇進行すると命の危険も
アルコール依存症は、進行性の慢性疾患で、治療を受けずに放置すれば、最悪の場合、命を落とすことになりかねません。
参考文献:
・「あなたの健康を守るためにアルコールについて知ってほしいこと」神奈川県精神保健福祉センター
・「アルコール問題相談対応リーフレット」長野県精神保健福祉センター
◆仲間と共に酒を断つ 断酒会のすすめ
断酒会は、アルコール依存症に悩む人たちの自助グループです。例会では、参加者一人一人が、過去の酒害体験や現在の自分などについて語ります。自分自身の体験を話すだけでなく、ほかの参加者の話を聴くことで、お酒をやめられなかった過去の自分に対する洞察が深まり、断酒の継続につながるとされています。
当事者のみの例会のほか、家族会もあり、家族の悩みを体験談として語り合い、お酒に関する正しい知識や対処法などを学んでいます。
◇断酒会では、「言いっぱなし」「聴きっぱなし」がルール
自分の人生で何が問題だったのかに気づけた。仲間の話にヒントがあった。
酒をやめた人生は新しい人生。それに気づけたのは、同じ病気になった皆さんの存在のおかげ。
◆(当事者インタビュー)人は変われる断酒を通じてつかんだ新しい人生
・大和つくし断酒会会長 上原さん(48)
◇悩みを一人で抱え込んだ幼少期
思えば、私には依存症になりやすい傾向のようなものがあったのかもしれません。
親父もアルコール依存症でしつけが厳しく、幼少期から「苦しいことを人に話してはいけない」「自分で自分をケアすることが当たり前」と考えていました。このような考えを持つ人が、アルコールに限らず、依存症に陥りやすいと考えています。お酒をやめるためには忍耐強さが大切だと思われがちですが、そうじゃないです。人に自分の弱さや悩みを話せない我慢強い人、真面目な人が、依存症になってしまうんです。
◇酒におぼれた日々
飲み方がおかしくなり始めたのは、最初の妻と離婚してからです。4人の子も失った私は空っぽになり、生活もめちゃくちゃになりました。基本的な生活は飲んでいるか仕事をしているか。夕方仕事を終えてから朝まで飲んで、2~3時間寝て、酒も抜けないまま作業現場へ向かう。まともに仕事をしているのは毎日3時間ほどでした。こんな生活を2年ほど続けていました。その間、仕事も転々としており、ある会社の採用試験で肝臓の数値が悪く、不採用になったのをきっかけに、酒を断つことを決意しました。
◇断酒への道
私は、酒をやめるために地元の沖縄に帰りました。2~3か月は断酒できていましたが、夏休みになり、妹の子どもが来ました。私はその子を自分の子どもと重ねてしまい「自分はこんなところで何をやっているんだ」と、また酒におぼれる日々が始まりました。
でもある日、母に背中を押され、アルコール専門病院に行ってみると、即入院。薬による治療やプログラムなどを受けて、無事退院できました。退院後、就労支援と断酒会に通う日々を1年間続けて神奈川に戻り、大和つくし断酒会に入りましたが、すぐに行かなくなってしまいました。しかし、同じ境遇の人にしか分からない苦しみがあります。私はもう一度入会し、それから8年、現在に至ります。
◇断酒で変わった人生
断酒会に入って、私は変わりました。断酒会は断酒をするためだけの場所ではありません。私を人として成長させてくれました。役職も任され、自信もつきました。人のことを思いやれるようになり、人の話が聴けるようになりましたし、人への気持ちの伝え方を学びました。
先輩がたは「まずは酒やめるためにがんばろうな」と優しく接してくれました。最初は「体験談を語り合うだけで何になるんだ」と思っていましたが、今は違います。人に心のうちを話すことで、すっきりするんです。それが身に染みると、通い続けようと思うようになります。
断酒会で人に話すことでどれだけ楽になることか。寝て起きたら仕事の内容が変わるわけではないし、仕事は大変だし、何も変わっていない。だけど、私には相談相手がいる。沖縄に帰れば200人、神奈川には300人。それで私は強くいられる。その安心感で私は酒をやめ続けられています。
◆AUDIT(オーディット)(スクリーニングテスト)でチェック
世界保健機関(WHO)が問題飲酒を早期発見する目的で作成したスクリーニングテストです。
アルコール問題の評価ツールとして多くの国で使用されています。
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
※二次元コードは本紙をご覧ください。
◆治療に向けて まずはこちらへ
◇県厚木保健福祉事務所大和センター保健予防課
【電話】261-2948
◇AA※関東甲信越セントラルオフィス
【電話】03-5957-3506 正午~午後5時30分
(火・木・日曜日を除く)
※AAは、アルコホーリクス・アノニマスの略で、飲酒をやめたいという思いで集まった当事者の団体です。
◇保健福祉センター障がい福祉課
【電話】260-5667
◇(一社)神奈川県断酒連合会大和つくし断酒会
(酒害相談)(断酒会)
日時/場所:ホームページ参照
申し込み:不要
問い合わせ:いずれも同会・上原
【電話】070-4146-0864
問い合わせ:保健福祉センター障がい福祉課こころの健康係
【電話】260-5667【FAX】262-0999
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