■身近になっている 地球温暖化
《平均気温は30年間で2・5度Cも上昇》
連日のように猛暑が続いた今夏。年々気温上昇を感じている人は多いのではないでしょうか。
そもそも地球は、地表で反射した太陽の熱エネルギーを、温室効果ガスがキャッチすることによって覆い温められています。
温室効果ガスが増えると太陽の熱エネルギーを持ち過ぎてしまい、気温上昇につながります。
実際、本市の平均気温は、30年前の平成5年に比べて2・5度C、10年前の平成25年に比べて1・3度Cも上昇しています。
そうした危険な暑さから、熱中症への警戒を促す「熱中症警戒アラート」は県内で、令和3、4年度に10回だったところ、令和5年度には26回も発表され、熱中症による救急搬送件数は、市消防本部管内で年間200件を超え増加傾向となっています。
〈温室効果ガス多の場合〉
太陽からの熱
温室効果ガス
気温の上昇
宇宙への熱の放出小
《かつてはミカン栽培の北限だったが》
地球温暖化による気温上昇は、小田原の農水産業にも影響を及ぼしています。
かつて小田原は、ミカン栽培の北限といわれていましたが、現在では宮城県でも栽培されているようです。
また、漁業では、これまで小田原では獲れなかった桜エビが獲れたり、秋が旬のソウダガツオが冬や春に獲れたりするなど、漁獲される種類や季節が変わってきています。
〈本市の平均気温〉
平成5年:14.6度C
平成15年:15.2度C
平成25年:15.8度C
令和5年:17.1度C
◆[市内の農家さんにも聞きました]
変わる農業の現場
35年くらい前から家業を継いで農業を営んできました。今は、主にミカンとウメを栽培していますが、以前に比べてさまざまな変化を感じています。
中でも気になるのは害虫問題です。皆さんもよく見かけるようになったと思いますが、ここ数年でカメムシが大量発生しています。カメムシは、ミカンの実の汁を吸って腐らせてしまいます。
その他にも、これまで見たことのない虫が幹の中に入り込み、木を枯らしてしまう現象が見られます。
また、昔は冬の寒さで死んでしまっていた虫や菌も、今は暖冬で死ににくくなったようで、その影響による被害が増えているように感じます。
わが家はミカンを無農薬で栽培していることもあって、虫などから農作物を守るのは本当に大変です。
他には収穫の時期です。わが家では、「白加賀(しらかが)」というウメの品種を、以前は6月1日からもぎ始めてましたが、年々収穫時期が早まり、最近では2週間ほど早く収穫を始めています。
神保 忠司さん
◆私たちが目指す「カーボンニュートラル」
《身近なエネルギーから》
CO2が排出される主な要因は、電気や熱を生み出す化石燃料の燃焼といわれています。私たちが暮らす現代社会では欠かすことができない電気の7割以上は、石炭や石油、天然ガスなど、温室効果ガスのもととなる化石燃料を燃やすことでつくられており、多くのCO2を排出しています。
一方で、残り約2割は、CO2を排出しない太陽光などの再生可能エネルギーでつくられており、地球温暖化を防ぐためには、この再生可能エネルギーを増やしていくことが必要とされています。
〈国内発電電力の割合(令和4年度)〉
火力:72.7パーセント
太陽光:9.2パーセント
水力:7.6パーセント
原発:5.6パーセント
バイオマス:3.7パーセント
風力:0.9パーセント
地熱:0.3パーセント
《フロントランナーとして》
こうした課題を解決するため、市は10年以上前からエネルギー政策に取り組み、関係する事業者と共に、全国に先駆けたさまざまなチャレンジを行っています。
その一つが「電源開発」です。市では2030年度に再生可能エネルギー量を2019年比で約5倍まで増やすことを目指しており、現在、市内全域の住宅や事業所などに対し、太陽光発電の設置に伴う補助金の交付などを行っています。
もう一つが「エネルギーマネジメント」です。一般には、電力の需給バランスを調整するというものですが、市では、発電された電力を可能な限り市内で有効に活用するための仕組みとして、小・中学校やEVカーシェアステーションなどで既に取り組んでいます。現在は、全国初となる市域レベルでのエネルギーマネジメントとして「電力地産地消プラットフォーム」の構築に挑戦しています。
これらの事業は、令和4年11月に国から選定された脱炭素先行地域計画に基づき進めています。
市では他にも、小田原駅東口エリアにおける小田原城を含めた「ゼロカーボン商店街」や「EV宿場町」の実現などを目指しています。
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