◆[おだゼロアンバサダーの選択]
気候変動対策に向けて行動のきっかけづくり
脱炭素社会に向け、身近で実践できるゼロカーボンアクションに取り組む人たちのリアルな姿を紹介しようと、おだわらゼロカーボン推進会議が8月に任命した「おだゼロアンバサダー」。
以来3カ月間にわたり、7人のアンバサダーがそれぞれの活動を自身のSNSで発信してきました。その一人、長谷川諒(まこと)さんに話を聞きました。
《地球温暖化が招く貧困や格差をなくしたい》
私が「おだゼロアンバサダー」に志願したのは、気候変動対策に貢献したいという思いからです。実は、大学時代に興味があったのは、環境ではなく格差社会の問題でした。
知見を深める中で、地球温暖化によって、農作物などの生産量が減少したり、人々の健康が損なわれたりするなど、貧困や格差を招く要因の一つになっていると知ったのです。
その時から、誰もが人間らしい当たり前の生活を送り、平等に機会が与えられる社会にするためにも、環境問題は喫緊に取り組むべき課題だと考えるようになりました。
太陽光パネルの下で栽培を始めたミカン
※詳しくは、本紙をご覧ください。
《農家と環境に優しいソーラーシェアリング》
この活動で発信している取り組みの一つが、ソーラーシェアリングです。耕作放棄地に太陽光パネルを設置して発電を行いながら、パネルの下ではミカンや野菜などを育てています。
同じ土地を「発電」と「農業」でシェアするため、環境に優しいシステムであることはもちろん、農家の収益性の向上も期待されています。
地球温暖化の緩和には、社会や環境に配慮した暮らしが求められ、そのためには一人一人のライフスタイルを転換させる働きかけが必要です。
とりわけ同世代の若い人たちの行動変容につなげるには、たくさんの知るきっかけを提供していくことだと思います。また、SNSによる情報発信だけではなく、体験の場を提供することも大事にしています。
おだゼロアンバサダー
長谷川 諒さん
◆[太陽光パネル設置者の選択]
街全体で取り組むゼロカーボンの推進
市は、大型施設での脱炭素化を図るべく、脱炭素先行地域の一つに久野地区生活拠点エリアを指定して補助を行っており、企業が自ら事業の使用電力を再生可能エネルギー100パーセントで賄う「RE100」を目指しています。
令和6年1月にオープンしたクリエイト久野川橋西店では、市の補助を活用して太陽光パネルを設置しています。店舗の開業に携わった石崎さんに話を聞きました。
《太陽光パネルの設置は当たり前に》
弊社では、2030年度までに売り場面積当たりのCO2排出量を、2014年度比で50パーセント削減することを目標としています。
そこで、大型店舗や物流センターでは余剰電力を売電する太陽光パネルを、小型店舗では当該店舗の電気料金の3割程度を賄う太陽光パネルを設置しています。
久野川橋西店は、市の補助を受け、県内店舗で初の自己投資型太陽光パネルを設置しました。
最近は、太陽光パネルを新店舗だけではなく、なるべく既存店舗にも載せるようになりました。
久野川橋西店に設置された太陽光パネル
※詳しくは、本紙をご覧ください。
《RE100に向けてあらゆる可能性を》
既存店舗にも太陽光パネルの設置を検討する中で、建築基準法上の耐荷重や、壁面に設置した際の反射などの問題をクリアすることが課題となっています。
そこで、まずは主に空調の入れ替えやLEDのセカンドリプレイスを進めています。
グループでRE100を達成するといった意味では、物流センターなどの売電分を別の既存店舗に振り替えるなどの仕組みができると良いとは考えていました。
当グループだけではなく小売業界全体で意識が高まる中、今回、小田原市で進めようとしている電力地産地消プラットフォームが、今後どのような仕組みとなるのか注目していきたいと思います。
クリエイトSDホールディングス店舗企画部
石崎 豊さん
◆[ORE100達成事業所の選択]
補助金を活用して新たな街の魅力が誕生
令和6年3月、市内栄町にオープンした小田原シネマ館は、市の補助を活用して映画館の特殊な空調設備を導入しました。
また、使用する電力を100パーセント再生可能エネルギーで賄い、このたび「ORE(オーレ)100達成事業所」※に登録されています。
小田原シネマ代表取締役社長古川達高さんに話を聞きました。
《特殊だからこそ環境に優しく》
小田原シネマ館は「街中に映画館を復活させたい」という故・簑宮武夫さんの発案によって、使われなくなった倉庫を改装して誕生した全40席の映画館です。
構想から完成まで6年の歳月を費やしました。
窓がない映画館にとって、空調設備はとても重要で、法律でも換気の基準が厳しく定められています。
また、空調設備のノイズが鑑賞の妨げとならないよう、通常とは異なる特殊な方法で設置する必要がありました。
これに加えて、2階に整備するレストランも空調設備は不可欠なので、設備投資の費用がかさむと予想していました。
そんな折、市から補助金の提案を受けたのです。CO2排出の削減を期待できる高効率換気空調設備を導入する場合、費用の3分の2が補助されるというものでした。
設置にかかるイニシャルコストだけではなく、電気料金の削減にもつながるので、ランニングコストの削減にも非常に有効であると感じました。
小田原シネマ館
2階のレストランにも高効率換気空調設備を導入
※詳しくは、本紙をご覧ください。
《自己完結型で継続的な事業を営むために》
今回、2階のレストランと合わせて使用する電力を湘南電力から100パーセント再生可能エネルギーで調達し、「ORE100達成事業所」に登録しました。
私は、以前から防災への意識が強かったのですが、東日本大震災を機にエネルギー問題へ関心が広がりました。
いざというときに自己完結できるようにしておきたいという考えが、エネルギーの自給自足につながって、自然とRE100を達成する事業モデルとなったのだなと思います。
事業を営むにはエネルギーが不可欠です。しかし、カーボンニュートラルを目指すからといって、企業が事業をやめてしまえば、それは社会の衰退につながります。
環境を意識し、持続的かつ自己完結型の事業モデルとして、小田原シネマ館を運営し、人にも、地域にも、また地球にも優しい映画館として、末永く小田原の魅力の一つとなれるよう努めていきたいと思います。
※事業で使う電力を、100パーセント再生可能エネルギーで調達する目標を達成した事業所
小田原シネマ代表取締役社長
古川 達高さん
【WEB ID】P38743
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