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【特集】私たちの選択~2050年のカーボンニュートラルに向けて~(3)

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神奈川県小田原市

《広がる選択肢》
これまで電気は、発電所でつくられて、消費者や事業者はそれを購入するといった選択しかありませんでした。
ところが、再生可能エネルギーでの発電が可能になったことから、現在は太陽光パネルを載せた住宅や事業所などでも発電できるようになっています。
そんな中、太陽光で発電された電気は、自宅などで使う一方、使い切れずに余ってしまうと売電され、市外で使われることも多くなっています。

《電気の特性と太陽光発電の課題》
そもそも電気を輸送する役目を担う電線には、そこに流せる電気の量に限りがあるため、電線に流せなかった電気は、せっかく発電したとしても捨てざるを得なくなります。
また、太陽光発電は、季節や天候、日照時間によって、発電量が変わる不安定な発電です。それが増えると安定供給は難しくなっていくため、電気をつくる量と使う量の調整が課題となっています。

《エネルギーの地域自給への第一歩》
そこで市では、市内の再生可能エネルギーでつくられた電気を、可能な限り市内で循環させ無駄なく消費する「電力地産地消プラットフォーム」の構築を進めています。
このプラットフォームでは、使い切れなかった電気を買い取り、電力の需要と供給を調整しながら、電気を必要とする事業所などに供給することによって、市内における電力の地産地消を実現します。
市は、9月30日に東京電力パワーグリッド、東京電力ホールディングス、湘南電力と協定を締結し、令和7年度中の運営開始を目指しています。
複数の発電者、発電事業者、小売電気事業者、電力需要家(消費者)が参加する、市域レベルでのエリアエネルギーマネジメントは、全国に先駆けた事例で、まさに小田原が目指す「エネルギーの地域自給」を実現するための第一歩となります。
また市内で、こうした電力の地産地消が進めば、電力の売買が盛んになっていくため、地域経済の活性化も期待できます。

〈4コマ漫画で分かりやすく説明しています!〉
再エネ電気ちゃん
※詳しくは本紙をご覧ください。

◆[協定締結事業者の声]
電気の有効活用に価値あるものへ

《地域内で効率的に電気をつくる、運ぶ、使う》
ライフスタイルの変化やオール電化の普及によって、以前に比べ電力需要のピークが変化しています。太陽光発電は再生可能エネルギーとして注目されていますが、季節や天候、日照時間で発電量が上下します。また、電気の特性として、長距離の電気輸送はロスが発生してしまいます。
こうした課題を解決するため、地域内で需要と供給をマッチングさせ、効率的に電気を使えるようにする仕組みが「電力地産地消プラットフォーム」です。
小田原市は、以前から先進的な取り組みを行っていたこともあり、行政だけではなく民間企業や地域の方々もエネルギー政策にとても前向きです。
私たち送配電事業者としては、地域の皆さんとの取り組みに期待していると同時に、こうした土壌で行う全国初の試みにとても大きな価値を感じています。

東京電力パワーグリッド小田原支社長
川口 龍一さん

◆[協定締結事業者の声]
エネルギーの新時代を小田原から全国に

《企業理念を具現化すべく取り組む》
東日本大震災の際に経験した計画停電をきっかけに、エネルギーを自らの地域でつくり、地域で消費する「地産地消型」を目指してきました。
これまで市内では、久野に位置する辻村農園に大規模発電施設としてのメガソーラーを、電力を流通させるためのローカル電力会社として湘南電力を立ち上げ、
蓄電機能としてEVカーシェア事業を手がけるREXEV(レクシブ)と連携するなど、主要なピースが形づくられてきました。
今回、このプラットフォームがこれらの点をまさに線でつなぎ、再生可能エネルギーによる電力の地産地消に向けた、全国初となる取り組みとして始動できたことは、大変意義深いことだと思います。
実現に至るには、まだ越えなければならないハードルがいくつもありますが、ここ小田原からエネルギーの新時代をつくる意気込みで取り組んでいきます。

湘南電力代表取締役社長
原 正樹さん

◆[「ZEH」居住者の選択]
今の時代に合った生活を送るため

新築住宅の新基準として注目される「ZEH(ゼッチ)」。家庭で使用するエネルギーを、断熱化などによって最小限に抑えた上で、必要な分は太陽光発電などで得たエネルギーで賄い、消費するエネルギー量を実質的にゼロ以下にする住宅を指します。市では、「ZEH」の新築・購入に対して補助を行っています。
この補助を活用して「ZEH」に住む細川さんに話を聞きました。

《日々の暮らしを快適に》
当初、住宅を新築する際に重視していたのは耐震性でしたが、調べていくうちに「ZEH」を知りました。エコというよりは、光熱費を抑えられるだけでなく、災害にも強いということで、快適な暮らしができそうだと思ったことがきっかけです。
太陽光パネルの設置など、予定していた予算を超えてしまうので悩みましたが、市からの補助が最終的な決め手になりました。
実際に住むと、夏は日差しが強いことから太陽光による発電量が高く、今年も冷房器具の電気使用量を十分に賄うことができました。
また、「ZEH」は高断熱・高気密が特徴の一つで、冬は暖かくて、部屋と部屋の気温差が小さいことから、これからの季節は過ごしやすいかと思います。

《自然と節電を心がけるように》
太陽光パネルを設置したことによって、発電量と消費量を気にするようになりました。その様子がモニターで確認できるため、今では小さい子どもも含め家族全員で自然と節電を心がけています。
最近は、いわゆる時短家電なども多く普及している中で、電気を自給する太陽光パネルを設置した「ZEH」は、現代に即した一つの選択肢だと思います。

〈細川さん宅の電気の状況(年間)〉
電気使用量:5681.6キロワットアワー
発電量:7334.7キロワットアワー

《住まいのエネルギー収支をゼロ以下にするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)》
「ご注文は省エネ住宅ですか?」(国土交通省)を加工して作成

〈快適な室内空間〉
夏は涼しく冬は温かい
高断熱・高気密で省エネする
[+]
〈エネルギーを効率良く使う〉
高効率な設備でエネルギーを抑える
[ー]
〈エネルギーをつくる〉
太陽光発電などでエネルギーをつくる
[〈=]
〈エネルギー収支ゼロ以下へ〉

「ZEH」居住者
細川英明さん

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