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自治体の皆さまへ

[特集]公民館の取り組みはローカルだけどグローバル 公民館でESD(3)

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神奈川県平塚市

◆持続可能な未来へ
◇ESDで公民館事業が進化
中央公民館館長代理の海老澤建志(えびさわたけし)さんは、「ESDの観点を取り入れる以前は公民館事業が固定化し、参加者の感想が『楽しかった』だけで終わってしまうものが多いのが実情でした」と、抱えていた課題を語ります。「地域の方に身近な社会教育施設として、もっと教育的な意味を追求したいという思いを持っていたんです」。
平成31年1月にユネスコから話があり、ESDの取り組みを始めることになりました。当初はESDという言葉も内容も知らない公民館主事が7割。世界的な動きと身近な公民館活動をいかに結びつけようかという葛藤が、各公民館主事にあったと言います。そこでまず、神田・須賀・金目・松が丘の4館で、試験的にESDの観点を導入。今ある事業を検証しました。「大安さんと池谷さんがESDの導入をコーディネートしてくれました。ESDやユネスコという言葉を公民館主事が重く捉えてしまうと話が進まない、と感じていたので、いかに肩の力を抜いて取り入れられるのかを考えました」と、海老澤さん。
令和2年には中央公民館を含めた全ての公民館事業で、ESDの観点で事業の振り返りをしました。これまでの事業に「変化」ではなく「進化」をと、過去にした実績のある事業にESDの視点を足し、内容のブラッシュアップを図ることに。参加者の学びを深めるにはどうしたら良いのかを、各公民館主事がより深く考え、事業を進めたと言います。毎月開いている主事会議では、各公民館主事が抱えている課題を発表し合い、意見交換をしながら事業を改良してきました。

◇未来を作る行動変容
令和4年からは、独自のESD評価指標「nadeshiko view(ナデシコ ビュー」で事業評価を始めました。公民館主事の中でも事業に対する充実感が生まれ、次に何をしようかという前向きな姿勢が広がっていると言います。
「何事も、言葉が浸透することで意識が浸透する、という面を持っていると思います。ESDという言葉を公民館事業に参加した方に浸透させ、行動変容にもつなげていきたいです」と、海老澤さん。「持続可能な社会をつくるには、今ある社会のいろいろな部分をつなぎ直さなくてはいけません。人と人とをつなぐ公民館で、『持続可能な未来』の創り手を育むことができるよう、これからも取り組んでいきます」。

◆地域とともにESD
「公民館の講座で紹介する内容を、自分ごととして捉えてほしい。そして、より地域を好きになってもらいたいです」と話す、八幡公民館主事の矢後大輔さん。八幡公民館(西八幡1-10-22)は地域の方とのつながりが強く、活動も活発だと言います。館内は地域の方の協力で季節ごとにデコレーションされ、地域の方が作った七夕飾りも大切に保存されています。地域の思いが詰まった公民館です。
地域の中から生まれた要望などを、公民館事業に結びつけることも多い、と矢後さんは言います。例えば6月に開いた新規事業「食道楽(しょくどうらく) 弦斎(げんさい)食育かるたと弦斎団子」は、地域の方からの「食育を学びたい」という声を受けて企画しました。明治時代の小説家・村井弦斎にちなんだ弦斎食育かるたの釣りゲームや、市内農家が育てた無農薬米を使った団子作りなどをしました。nadeshiko viewに照らし合わせて、学びを深められるよう工夫したと言います。例えば(1)の気づきは、平塚市が県内一の米どころであることや、無農薬栽培の苦労を知ること。(2)の未来は、地元の食材を使ったメニューで、地産地消を学ぶことなどです。参加者からも、「無農薬栽培にこんなに手がかかるなんて」「学校教育の場で取り入れても面白そう」「玄米の美味しさを発見できたので、家でも食べてみたい」など、気づきや行動変容につながる感想が寄せられました。
令和5年9月に、関東甲信越静の公民館関係者が集まる公民館研究大会が、長野県で開かれました。同大会では神奈川県からの推薦で、矢後さんらが平塚市のESDの取り組み成果を発表。ESDへの関心は高く、県内外の公民館から、多くの質問が寄せられたと言います。
「公民館の事業は、長年引き継がれているものも多いんです。でも、そこにESDの視点を足すことで、単なる前例の繰り返しではなく、参加者の方の気づきや学びにつなげることができます」と、矢後さんは力を込めます。「これからも一つ一つ考えながら、公民館事業をブラッシュアップしていきたいですね」。

◆nadeshiko view(ナデシコ ビュー)
市民の花・ナデシコになぞらえています。評価ポイントは、ナデシコの花びらの数と同じ五つ。持続可能な未来へ向け、意識と人を育みます。

(1)気づき
自分の周りにさまざまな課題やつながりがあることに気付けたか
(2)未来
どんな未来にしたいか考え、望む社会を思い描けたか
(3)自分事
関心が湧いたり、自分にできることが分かったりし、行動しようと思えたか
(4)さまざまな視点
互いを認め合いながら、さまざまな視点で物事を考えられたか
(5)協力
協力することに楽しみを感じ、成果が生まれたり、新しいことが創造できたりしたか

◆ちゅうおうFESTA(フェスタ)
中央公民館で学習活動をしている団体が、発表や作品展示、体験教室などをします。景品がもらえるスタンプラリーもあります。
日時:1月27日(土)・28日(日)、午前10時~午後4時
場所:中央公民館

問い合わせ:中央公民館
【電話】34-2111

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