救助要請が入れば火災・交通・水難事故など、どんな現場にも出場する救助隊。市民の命を守るために日々備えている。
1月に石川県で発生した能登半島地震で、神奈川県緊急消防援助隊として派遣された、川口救助隊長。現地で土砂崩れや建物倒壊など、壮絶な現場を目の当たりにした。余震などもあり二次災害が起きる可能性もあった。「助けを求める人の救助はもちろん、自分たちの安全も考えないと、救える命も助けられないと感じました」と話す。
今年、平塚消防は崩落監視システム(左囲み)を導入した。これまで土砂災害や建物倒壊現場では、人の視覚・聴覚・嗅覚を頼りに危険を判断していた。システムを導入したことで、崩落・倒壊の危険はシステムが知らせてくれるので、救助活動に専念することができると言う。
◆救助を待っている人がいる限り
救助隊は毎日訓練を積み重ね、いざという時に備える。災害や事故現場での活動時間の何十倍もの時間を、訓練に費やす。その原動力は何か問うと「『人命を救助する』その使命感に尽きます」と川口救助隊長は力を込めて言い切る。災害現場に出ればチームで活動する。日々の訓練では個人のスキルを上げるのと同時に、隊員一人一人の強みを把握してチームワークを高めていく。事故や災害はいつ起こるか分からない。気を引き締めて、今日も救助隊は資機材を点検し、救助訓練を積む。
◆要救助者・消防隊員を危険から守る 崩落監視システム
土砂災害現場での地盤の崩落や、火災・震災現場での建物の倒壊を予測・監視するシステム。人の目での監視は、ある程度の物の動きが無いと気付くことができない。このシステムは監視対象物にレーザーを照射し、構造物や土砂のわずかな動きを感知する。動きがあると瞬時に警報音と光を発して周囲に危険を知らせる。警報を聞いた隊員は直ちに安全な場所に退避する。
◆救助隊の頼れる相棒 救助工作車
人命救助活動を専門とする車両。16年ぶりに更新し、9月から救助現場の最前線で活躍している。後部座席の空間が広く確保されており、隊員は出動中の車内で装備ができることから、災害現場到着後に素早く活動を開始できる。
車両には交通事故に対応した大型油圧救助器具や、鉄板をプラズマの熱で溶かし切断するプラズマカッター、火災時に対象物の温度を測定する熱画像直視装置、夜間暗視装置など、さまざまな資機材を搭載している。三連はしごやクレーン、車両牽引などに使うウインチ、夜間活動のための照明装置も装備されている。
大型油圧救助器具は、これまではエンジン式で、使うときには油圧ユニットとホースの接続が必要だった。新しい器具はバッテリー式を採用していて、車両から取り出してすぐ使うことができる。また、狭い所などでの機動力が向上。作業音もエンジン式に比べると抑えられるので、隊員同士や要救助者とのコミュニケーションの取りやすさにつながっている。車両側面のシャッターには「市民の鳥しらさぎの羽」とRESCUE(レスキュー)の「R」が描かれている。
◆他にも、こんな資機材・車両を揃えて命を守る備えをしている
◇上空から情報収集 災害用ドローン
令和4年に導入したドローン。建物火災や水難をはじめとする救助現場などの状況確認・捜索活動をする。大規模災害時には被害状況を早期に確認し、安全で効果的な部隊の活動を援助する。
◇迅速な救出が可能 高機能救命ボート
一度に最大20人を収容でき、車椅子のままでも乗れる。船底を補強布で保護しているため、がれきなどが散乱する浸水域でも活動ができる。
最大積載重量は約2トンで、大量の物資も運べる。
◇30度の傾斜、30センチの障害物を乗り越える 水陸両用バギー
平成26年に緊急消防援助隊の活動体制強化と充実を目的に、総務省消防庁から無償貸与された。一般道路・荒れ地・水上走行の他、タイヤにキャタピラーを装着すれば、ぬかるみや砂利道などでも走行可能。災害現場での物資や人員の搬送ができる。
◆技術を磨く
◇火災対応訓練
火災が起きた建物の中とベランダにいる要救助者を救出する訓練。
・救助隊・要救助者の援護を目的に、地上から消防隊がベランダに向かって放水している。救助隊は放水を受けながら要救助者にベルトを締める
・スモークを充満させ、濃煙状態を作り出した部屋に進入し、要救助者の捜索に向かう。暗闇と大量の煙で視界は悪い。救助隊員は声を掛け合い、中へ進んでいく。迅速・冷静な対応が求められる
・はしごで要救助者をつって救助
◇鉄道災害対応訓練
鉄道機関と消防機関の連携強化などを目的とする訓練。訓練想定は、駅ホームから線路内に人が転落し、列車は緊急停止し脱線。救助隊は転落した人の救出に向かう。
・車両の下に潜り込み、要救助者に声を掛け続けながら処置をする
◇交通救助訓練
事故の衝撃でドアが開かなくなった車の中にいる要救助者を救出する訓練。
・破壊器具のスプレッダーを隙間に挿入し、力をかけてドアを開ける
◇水上オートバイ訓練
海岸出張所には消防隊も兼ねた水難救助隊が配置されている。水上に出れば、自分たち以外に簡単に援助を求めることはできない。だからこそ実践訓練を重ね、隊員同士の連携を深めることが必須。
・意識を失っている要救助者を発見し、オートバイの後ろに乗る隊員が入水
・隊員二人で要救助者を素早くライフスレッドに引き上げる
※詳細は本紙をご覧ください。
問い合わせ:消防総務課
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