終活は、これらを「安心して過ごすために備えること」であり、「自分らしく充実した日々を生きること」です。
考えを整理したり、周りの人に意思を伝えたり、できることから始めませんか?
■これからの自分のため
市の総人口に占める65歳以上の方の割合は、約3割(令和6年1月末現在)。そのうち、一人暮らしをしている方は、7500人を超えます。親族が遠方で連絡が取りにくい、または親族がいない・つながりがないという人は、今後増えていくことが想定されます。市高齢福祉課の横山貴臣課長代理は、「認知症になってしまったら、孤独死してしまったらどうなるのか、という不安の声も多く寄せられています」と話します。
実際に、墓地を生前購入していた方が、買ったことを誰にも伝えておらず、共同墓地への納骨手続きが進む……ということもあったとか。この事例では契約書が見つかり事なきを得たそうです。「判断能力があるうちに、意思を示しておくことが大切です。自分のためであると同時に、親族や周囲の負担を減らすことにもつながります」。
◇希望に応じた選択肢
市では、令和元年度に検討会を立ち上げ、終末期に向けた活動(終活)を支援する事業を展開してきました。検討会は、市の関係課の他、社会福祉協議会や成年後見利用支援センターなどで構成されています。主任ケアマネジャーや社会福祉士、保健師など、専門知識のあるメンバーもそろっています。「必要な医療・介護、身寄りがあるかどうかなど、一人一人、準備すべきことが異なります」と横山さん。「支援は多角的に考えなければいけません。皆さんが望んだ終末に向けて、必要な支援を選択できるよう、関係機関との連携を強めています」と力を込めます。
■頼れる拠点は各地区に
令和3年に発行した平塚市版エンディングノート「わたしのノート」は、検討会の取り組みの一つ。「終末期」にマイナスなイメージを持つ人がいる中で、終活を始めやすいアイテムとして作られました。横山さんは「終活の始め方に迷ったら、ぜひ『わたしのノート』を使ってみてください。分かりやすくまとまっているので、考えを整理しやすいと思います」と説明します。
ノートは主にお住まいの地域にある高齢者よろず相談センターで受け取れます。終活で見つかった不安などは、まず同センターに相談することを横山さんは勧めます。
「最も身近にある公的な相談窓口なので、安心して利用してください。専門知識のある職員が、不安や悩みを丁寧に聴き、解決に向けたサポートをしていきます」
◇協定で支援が手厚く
今年3月、市は終活に特化した事業を展開する鎌倉新書と協定を結びました。「協定により、市の関連機関だけでは解決できない事柄でも、鎌倉新書の相談サービスで、専門機関につないでもらえるようになりました」と、協定による強みを語ります。
また新たに始まったのが、各センターで終活講座の講師を務める職員に向けた研修会です。「各センターの職員が、より分かりやすく伝えたり、幅広い支援を提案したりできるようになりました」と話します。デザインが一新され、最新の制度などが追加された、「わたしのノートVer2」も9月に配布が始まりました。各センターの講座で早速活用されています。
◇早めに整理を始める
いつ何があるのか分からないのが人生。「早いうち」に具体的な年齢はありません。「自分の考えを書き出したり周りの人に伝えたり、終活の方法は問いません」と横山さん。
「『自分は大丈夫だから』と後回しにするのではなく、そう判断できるときに、自分の意思を残しておきましょう」と呼び掛けます。決めておくべきことも、誰に何を伝えておくのかも、本人の希望や親族との関係性などによって、選択肢はさまざまです。
鎌倉新書との協定で、さらに手厚くなった終活支援。不安を早めに解消して、いつまでも自分らしく過ごせるよう、まずは考えを整理してみませんか。
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