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ひらつか障がい者福祉ショップ「ありがとう」おかげさまで10周年(1)

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神奈川県平塚市

平成26年7月にオープンした、ひらつか障がい者福祉ショップ「ありがとう」が、10周年を迎えました。「ありがとう」は、平塚市内と近隣地区にある36の障がい福祉事業所がつながり、一つになって運営しています。

◆きっかけは展示即売会
障がい者福祉ショップありがとうの前身は、福祉事業所の製品を販売する展示即売会です。市役所での展示即売会は平成8年から始まりました。「福祉事業所が製品を販売する機会は限られています。いつか常設店ができないかという思いを抱いていました」と話す、ひらつか障がい者福祉ショップ運営協議会の髙橋 眞木(たかはし まき)会長。
「常設店を開くには二つ課題がありました。まず第一に常設できるほど事業所が製品を作れるのか。第二に目玉商品となる製品を作れるのか、です」と髙橋さん。展示即売会は年4回なので、それに向けて製品を作り続けてためておけますが、常設となると製品を毎日出し続けなくてはなりません。髙橋さんは、市障がい福祉課と話し合いを重ねした。市からの条件は、「障がい者に関わる市内の団体全てをまとめて組織を作り、意見を一つにすること」でした。髙橋さんは当時、市地域作業所連絡会の会長をしていました。同会以外に、障がい者に関連する団体は11団体。一つにまとめるのは大変困難なことですが、髙橋さんは不思議と「やれる」と思ったそう。「実現できたらこんなうれしい話はないからね」。思わず笑みがこぼれたと言います。
それからは各団体と話し合いをする日々。「『福祉事業所の利用者が自分で働いて製品を作り、福祉ショップで販売する。売り上げは利用者の工賃(給料)になり、それが生活の糧になる』ということを、地道に1団体ずつ説明していきました」。1年8カ月をかけた関連団体との話し合いを経て、障がい者関連団体全会一致で、平成26年3月にひらつか障がい者福祉ショップ運営協議会が発足しました(下図)。運営協議会を作って福祉ショップを開いているのは、全国でも珍しい取り組みです。

◆ありがとうオープン
「福祉ショップオープンに向けて、店名を公募したり会員で考えたりしたけど、なかなか『これだ!』と思うものがなくて行き詰まっていたんです」と髙橋さん。そんな時に、1人の利用者と職員から「ありがとうがいいよ」と声が上がりました。お客さまに来ていただいてありがとう。買っていただいてありがとう。私たちをかわいがってくれてありがとう……。「シンプルに気持ちが伝わる言葉に『これだ!』と思いましたね」と目を輝かせます。ショップの名前も決まり、平成26年7月に障がい者福祉ショップ「ありがとう」がオープンしました。
オープン当初は思うように売り上げは上がらなかったと言います。けれど、パンやクッキーなどの種類が増え、知名度が上がるにつれて、まずは食品の売り上げが上がっていきました。「各事業所も製品のデザインが良くなったり、想像力が増してきて製品のバリエーションが広がったりしたことで、全体的な売り上げも伸びていきました」。
毎日店頭には数十種類のパンやクッキーなどが並んでいます

◆マスク作りで社会貢献
令和に入り、新型コロナで社会は混乱。マスク不足が叫ばれる中、髙橋さんはマスク作りを事業所に呼び掛けました。各事業所は試行錯誤してマスクを作り、ありがとうで販売。瞬く間にうわさは広がり、マスクを購入する人で市役所前には行列ができるほどだったそうです。市外からも注文が入るなど、予想を超える反響だったと振り返ります。

◆つながり広がる
ありがとうの知名度が上がるにつれて、つながりが広がります。日産車体や横浜ゴムなど企業のイベントへの出店や、エス・ケイ・ディから定期的なパンの受注、スズキ自販湘南から、来店した方へのプレゼントにする品物をスズキ特別仕様で作ってほしいと依頼され、毎月受注していると言います。「障がいのある方が作る製品を、一つの商品として価値を持って購入していただけることをうれしく思います」と髙橋さんはほほ笑みます。
他にも、毎年開いている福祉事業所の合同説明会は、障がい者福祉ショップ運営協議会が、7校の県立特別支援学校などと共に実行委員をしています。障がいのある方や家族に将来を考える機会を持ってもらうため、市内外の福祉事業所が一堂に会し、活動を紹介しています。学校卒業後の進路を考える当事者と家族だけでなく、生まれて間もない子どもが障がい認定を受けた家族や、孫の将来を知りたい祖父母が来ることも多いと言います。髙橋さんは「合同説明会はご家族への支援であり、孤立させずにつながりをつくる場として大きな役割を果たしていると思います」と胸を張ります。

◆これからの目標
ありがとうは地域とのつながりを大事にしてきました。「障がいのある方が特別支援学校を卒業して福祉事業所を利用する上で、事業所と地域の交流が盛んだと、ご家族の方が安心するんですよね。そのためにも、この事業をずっと続けていきたいです」と髙橋さんは力を込めます。
「今後は事業を拡大するのではなく、内容を充実させていきたいです。より仲良く、より安全に、より楽しく過ごせるような、福祉ショップありがとうでいたい。これが私のこれからの目標です」。

問い合わせ:ありがとう事務局(ありんこの会内)
【電話】34-0592

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