「笑顔」と「ありがとう」が自然と出る人になってほしい―。子どもたちと同じ目線で、活動を楽しむ心を大切にする青少年指導員。社会環境の変化に対応しながら、地域の各団体と連携し、青少年の健全育成に取り組んでいます。
●平塚市の青少年指導員
市内28の小学校区で、各地区の連合自治会長から推薦された333人を定員として活動しています。その人数は県内3位の多さです。活動内容は各地区に一任され、地域の中でのレクリエーション活動、街頭パトロール、社会環境実態調査などがあります。
◆5年ぶりの28地区開催
家族ぐるみで楽しめるレクリエーションで、地域と子どもをつなぐ「子ども大会」。毎年恒例の青少年指導員(青指)が開く一大イベントとして、昭和44年に始まりました。スポーツやゲーム、野外活動など、地区によって内容はさまざまです。しかし、新型コロナの影響などで、令和2~5年は中止する地区もありました。その期間にメンバーが交代時期を迎えるなど、各地区で青指を取り巻く状況は変わっていきました。「本年度は5年ぶりに、全ての地区で子ども大会を開くことがかないました。ただコロナ禍を経て、各地区で規模が縮小しているのを感じます」と話すのは、市青少年指導員連絡協議会の会長、相馬喜昭さん。「子ども大会は、子どもたちの笑顔を引き出し、地域とのつながりをつくる場として、長い間、大切にしてきたイベントなんです」と続けます。
◇無理なく続ける
各地区で起きている活動の縮小化。その理由は活動を制限される期間があったからだけではありません。相馬さんは「青指や関係団体の高齢化に伴い、協力いただける人数が減り、内容も縮小せざるを得ない……という現状があります」と語ります。「各地区が、地区の現状に合った方法を試行錯誤して、活動を続けています」。
相馬さんが地区会長を務める崇善地区も同様です。昨年11月の子ども大会では、運営側(がわ)の負担を減らす工夫が見られました。その一つが、鉄製の重いやぐらを屋外に組み立てるのをやめたこと。「組み立てに力を借りていた地域団体から年齢的に厳しいから……と、要望がありました。子どもたちのステージ発表を、準備から無理なく続けるために、屋内スペースを使う方法に切り替えました」。
また子ども大会を中止せざるを得なかった地区をずっと気に掛け、相談も受けていた相馬さん。工夫して「子ども大会を再開する」という一歩を踏み出したことを心から喜んでいました。
◆地域全体を巻き込んで
各地区の子ども大会は、学校や自治会など、さまざまな関係団体の協力があって開かれています。また崇善地区では、中学生が毎年ボランティアとして参加しています。「数年前まで遊ぶ側だった中学生が、ボランティアとして活躍する姿を見て、感動の涙を流す方もいるんです」とほほ笑む相馬さん。「地域で子どもたちの成長を見守っているのだと実感します。地域ぐるみで楽しめる場が、互いに良い影響を与えていると思うとうれしくなりますね」と地域全体を巻き込む意義を語ります。
◇笑顔を引き出す仲間
青指としての活動は23年目になる相馬さん。始めた頃は活動を正直面倒に感じていたとか。活動の捉え方が変わったのは、楽しさを知ってからでした。「できる範囲で続けているうちに、職場と家の往復では得られない、地域とのつながりができました」とにっこり。自身も現役で働きながら活動を続けてきたからこそ、「できる時に、できることを」と言い切ります。熱量の差で誰かが苦しくならないように、日々呼び掛けているそうです。
「もし『活動に関わりたい』と思ったら、その気持ちを大切にしてほしいんです。子どもたちの笑顔を引き出して、成長を見守る仲間が、各地区で途切れることがないように、続けていきたいですね」
◆(地域の変化を受け入れて工夫)次につながる第一歩
昨年、5年ぶりに子ども大会を再開した豊田地区。27年間、青指として活躍する豊田地区の理事、伊東多恵子さんに話を聞きました。
コロナ禍前の豊田地区子ども大会では、十数年間、ミニ運動会を開いていました。ただ、開催を見送っている数年で、地域団体の協力体制にも変化があり、今まで通りの子ども大会を開くのが、現実的ではなくなってしまったんです。青指のメンバーも2年の任期で入れ替わり、子ども大会の経験者はいなくなりました。そのため、「準備が大変そう」というイメージがあったからか、青指のメンバーも再開には後ろ向きでしたね。
◇研修会での出会いが背中を押した
状況は変わりませんでしたが、令和6年5月に、5年ぶりの子ども大会を開きました。内容は、講師を招いてのバルーンアート作りです。まず再開することを優先して考えて、人手がない中でもできる形を選びました。この形を思い付いたのは、令和5年に参加した青指の研修会。研修会で自分がバルーンアートを習ったような形で、子ども大会もできないだろうかと思い、相馬会長や研修会でつながった他地区の方に相談に乗ってもらいました。皆さんからの情報は本当に助けになりました。当日、大原地区の方がサポートに来てくれたのも、ありがたかったです。
◇青少年指導員としての姿を見せる
あくまで今回は再開への第一歩です。子どもたちから「また来年もやりたい」という言葉が出ました。青指主催のイベントとして、来年は講師に頼りっぱなしにならないように準備をしています。今回の子ども大会後、金田地区の青指にバルーンアートの経験者がいると知り、少しでも作り方を覚えられるように、力を借りたいと相談しています。また、うれしいことに青指のメンバーからも、前向きな声が増えたんです。子どもたちが笑顔で楽しむ姿を見られた効果はやはり大きいと思います。子どもともっと青指が関われる子ども大会になるように、次を考えていきたいです。
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