■被害者にも加害者にもならない
平塚警察署生活安全課の山下啓樹(ひろき) 警部補に、市内の犯罪情勢などを聞きました。
◆被害最多 自転車盗
平塚市内の刑法犯認知件数の内、全体の約3割を占めるのが自転車盗難(下円グラフ)です。県内でも被害に遭いやすい犯罪と言えますが、平塚は比較的平らな道が多く、駅が一つという土地柄、自転車の利用率が高いことも起因していると考えられます。
・平塚市内における令和6年刑法犯認知件数(暫定値)に占める自転車盗難の割合
◇6割が無施錠
盗まれた自転車の6割は無施錠車。発生場所の大半は自宅や商業施設などの、止めやすく出しやすい場所です。自宅敷地内だから、買い物をする少しの間だから、と油断してはいけません。
多くの犯人は、自転車であれば何でもいい、自分の足代わりとして今使いたい、歩いて帰る労力と、罪を犯すリスクをてんびんにかけます。目の前に無施錠の自転車があれば盗み、施錠されている自転車があれば鍵を壊してまで盗もうとは思わないという心理が働きます。
◇2重ロックで被害防止
犯人は手間がかかることを嫌います。自宅でも外出先でも、まずは施錠。できれば、備え付けの鍵以外にもう一つ鍵をかける2重ロックを推奨します。
◆手口巧妙 特殊詐欺
多種多様化している特殊詐欺。令和6年の被害額は過去最多の約3億円です(下グラフ)。
・平塚市内における特殊詐欺の認知件数と被害額の推移
◇振り込み型被害の増加
最近増えている手口は、電話口で公的機関をかたる詐欺です。犯人は総務省の職員や警視庁の警察官を名乗って、「あなた名義のキャッシュカードが詐欺に使われている。今、捜査線上にあなたが共犯者として挙がっている」などと言って、「疑惑を解消するために、インターネットバンキングを開設して、そこに資産を一極化してほしい」と誘導。IDや暗証番号を聞き出し、根こそぎ奪います。最初は自動音声から始まるケースもあります。
◇一人で対応しない
詐欺には共通する三つのポイントがあります。
・罪悪感
「あなたの息子が会社の大事なものをなくした」など、自分に非があると思わせて話を聞かせる。
・危機感
「裁判になる」「損害賠償が発生する」「逮捕される」など、不安をあおり判断力を低下させる。
・安堵(あんど)感
「お金を払えば大丈夫です」など、救いの道を示し、他のことを考えさせないようにする。
犯人は言葉巧みに被害者をマインドコントロールしていきます。「私は大丈夫」「自分はだまされるはずがない」と思っている方が大半だと思いますが、被害者の多くはそのような方々というのが現実です。過信は油断となります。誰にも相談せず、周りが気付いたときにはすでに遅かったなどということに。一度犯人側のペースに乗ってしまうと、抜け出すのは困難。犯人と話をしないことが何より大切です。有効な対策は(1)常に留守番電話機能に設定(2)迷惑電話防止機能付き電話の利用。電話に出てしまったら、いったん電話を切り、誰かに相談しましょう。
◇悪いのは犯人
被害者の中には「だまされたことが恥ずかしい」「家族から責められる」という話をする方がいますが、だまされる人は悪くありません。相手は組織で個人をだましにきているので、一人で立ち向かうのは難しいのです。勇気を持って周りの人や警察に相談してください。「今、不審な電話がかかってきた」などのわずかな情報でも警察に寄せてください。情報を基に速やかにさまざまな手段で注意喚起でき、被害を抑止することにつながります。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>