■第六十一回 日本中世 書物のつくりかた
県立金沢文庫学芸員 貫井 裕恵(ぬくいひろえ)
勉強や趣味の読書に欠かせない書物。中世、書物はどのように作られていたのでしょうか。それを知る手がかりが、国宝「称名寺聖教・金沢文庫文書」のなかに数多く伝わっています。特別展「中世寺院の書物」では、こうした文化財の数々をご覧いただきます。
本紙12ページ掲載の写真は、とても珍しい中世の校正刷です。一枚ごとにばらばらの状態で、それぞれの端裏に書名・刊賃(校正刷出稿料金)・刻工名(版木を刻んだ職人の名前)が書き込まれています。正慶元年(一三三二)という年号がみえ、称名寺三代長老の湛睿(たんえい)が関わっていたことから、鎌倉時代末期に称名寺で開板事業が行われていたことがうかがえます。中世寺院は、印刷所であり、学問の場でもあったのです。
■特別展「中世寺院の書物――聖教とそのかたち」
日時:12月1日(金)~1月21日(日)9時~16時30分(入館は16時まで)
費用:一般600円(500円)、20歳未満・学生500円(400円)、65歳以上200円(100円)、高校生100円、中学生以下・障害者は無料
※()内は20人以上の団体料金
休館日:毎週月曜日(ただし1月8日(祝・月)は開館)、12月28日(木)~1月4日(木)・9日(火)
問合せ:県立金沢文庫(金沢町142)
【電話】701-9069【FAX】788-1060
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