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「海老名市温故館(旧海老名村役場)」が国の登録有形文化財に

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神奈川県海老名市

大正から昭和にかけて村役場・町役場などとして使われた海老名市温故館(以下温故館)が、ことし8月、国の登録有形文化財に登録されました。11月1日~7日の文化財保護強調週間に合わせて見学ツアーも行います。市内で貴重な“百年建築”となった役場建物を訪れてみませんか。

■「旧村役場建物が現存」と評価
8月7日、温故館が国の登録有形文化財に登録されました。明治時代の郡役所など地方庁舎の面影を残す近代洋風建築で、現存する県内最古の役場遺構であることなどが評価されました。
関東大震災の被害を免れ、震災前の公共建築を現在に伝える貴重な建物です。建築に関する図面や契約書などの書類が残っていることも特徴です。

■さまざまな役割を経て「温故館」へ
現在の温故館の建物は、大正7(1918)年、海老名村役場庁舎として建築されました。昭和15(1940)年の町制施行後は町役場となりました。町の規模拡大に合わせて、北側、東側、西側へと増改築を重ね、同41(1966)年に新庁舎へ移転するまで48年間にわたり役場庁舎として使用されました。
その後、14年間商工会議所などとして使用されたのち、解体計画が持ち上がりました。市民の保存運動もあり、同57(1982)年に郷土資料館「海老名市温故館」として改修し、建物の歴史をつなげました。
耐震性の問題から温故館を休館した平成18(2006)年、再度、解体または保存修理の議論がありましたが、同22(2010)年に西側約180メートルの現在地に移築、改修を経て翌年4月に「海老名市温故館」として再び開館しました。
郷土の歴史に関する文献・記録・民俗・考古などの資料を収集・保管・展示し、海老名の歴史を今に伝える役割を担っています。

■温故館たてもの見学ツアー
通常はガラス越しでしか見ることのできない小屋組みなどを案内します。直接会場へ。
期間:11月3日(金)(祝)~5日(日)10時から・10時30分から・11時から・13時30分から・14時から・14時30分から・15時から
場所:海老名市温故館

■建物の特徴
木造二階建寄棟造桟瓦葺(さんがわらぶき)で、東側に切妻造の玄関ポーチを設け、外壁は下見板張りで仕上げています。上げ下げ窓や玄関ポーチなどは洋風建築の要素を取り入れる一方、小屋組みや土台、軸組みなどは日本古来の工法が踏襲されています。
当時は土間のある麦わら葺や茅(かや)葺屋根の民家が大半であった中、このような外観が洋風の建物は海老名では珍しく、〝ハイカラ〟な建物でした。

▽柱頭飾(ちゅうとうかざ)り・垂飾(たれかざ)り・方杖(ほうづえ)
角柱には柱頭飾り、柱頭から横架材を曲線的につなぐやや平たい方杖の先には、先端が四角錐(すい)の垂飾りがついている。洋風な特徴を多く持つ造り。

▽バージボード
玄関ポーチの装飾された破風板のこと。直線で構成された幾何学的な模様は、最もモダンな印象を与える部分。

▽入り口扉
玄関にある木製の入り口扉。上部飾りはやや日本的な雰囲気も。扉は、温故館への改修の際に交換しているが、当時の意匠を留(とど)めている。

▽上げ下げ窓
上げ下げ式で、下のガラス部分を動かすことができた。ガラス越しの景色が歪(ゆが)んで見える古いガラスを、今も2階の窓の一部に使っている。

▽外壁
ドイツ下見と呼ばれる横方向に目地が見える板張りの壁で、一部を2階に展示している。建築当初は青鼠(あおねず)色だったことが分かっている。

▽小屋組み・梁
2階小屋組みは傷みが少なかったため、資材を全面で再利用し移築した。2階の丸太梁(ばり)は、現在化粧梁として館内2階天井に展示している。

■コラム 棟梁は伊豆大工「藤井熊太郎」
「伊豆大工」と呼ばれた職人たちは、腕の良さから名声が高く、江戸時代から相模国内で活躍していました。
海老名村役場の建築は、静岡県仁科村(現・賀茂郡西伊豆町)出身の藤井熊太郎(1869-1925)が大工の棟梁(とうりょう)を務めました。海老名小学校第3仮教場や尋常高等海老名小学校、常泉院などを手掛け、海老名周辺では腕利きの大工でした。国登録有形文化財の嶋㟢家住宅主屋も熊太郎の建築とみられます。

■海老名市温故館
開館時間:9時~17時15分(入館は16時45分まで)
所在地:国分南1-6-36
小田急線・相模線「海老名駅」から徒歩約11分。コミバス国分ルート「相模国分寺跡」下車、徒歩約1分

問い合わせ:
海老名市温故館【電話】233-4028
教育総務課【電話】235-4925

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